椅子に座ってそう話す彼女の顔はいつものように
おちゃらけていたがその顔にはいつもはないはずの陰が
あった
隣に座っている敢助くんが有無を言わせないような
圧迫した言い方で問いかけた
それと同時にあなたさんはフラフラ揺れるのを
止めた
敢助くんはそう言うと私の隣に座っていたのに
立ち上がりわざわざ彼女の前まで歩いていく
敢助くんはあなたさんの前でしゃがみこみ
顔を覗くように自分の頭を上に向けた
彼女の瞳には涙が映っていた
僕は小さく溜息をつきながら立ち上がった
そこまで話せば敢助くんは少し引いたような顔を
してこちらを見てきた
あなたさんは涙が引きぽかんとした顔で
こちらを見ていた
そう呟く彼女は笑顔だった
先程までのムードは何処に行ったのだろう
そう思わせるくらいこの部屋をその笑い声で
明るくした
言われて想像してみると確かにあのストックが簡単に
減るとも思えないし減っていれば気付く
そう言ってから一拍置いて口を開いた
だいぶ悩んだ後、何かを思い出したように
閉じていた瞳をゆっくりと大きく開け
という言葉をこぼした
お互いが分かると敢助くんはスマホを取りだして
由衣さんに連絡した
僕はそう言いながらこの部屋に飾ってあるカレンダーを
見つめた











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。