第44話

『 一口だけの嘘 』 ⑤
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2025/11/30 00:01 更新

大和敢助
悪いな、話してる最中に呼んで
刺刀
それは大丈夫だよ、
刺刀
由衣はどうしたの、
一緒に居なかったっけ
諸伏
えぇ、先程まで一緒でした
諸伏
が、先に県警の方に戻ってもらってます
刺刀
…ふーん
大和敢助
なんだその顔
刺刀
いーや?なんでもないけどね

椅子に座ってそう話す彼女の顔はいつものように
おちゃらけていたがその顔にはいつもはないはずの陰が
あった
刺刀
にしても私も出世したなー、
命狙われるなんて…、
大和敢助
お前だって誰が犯人分かってんだろ

隣に座っている敢助くんが有無を言わせないような
圧迫した言い方で問いかけた
それと同時にあなたさんはフラフラ揺れるのを
止めた
諸伏
敢助くん、
刺刀
なんの事、大和
刺刀
私犯人なんて解らないけど─────
大和敢助
嘘つくな

敢助くんはそう言うと私の隣に座っていたのに
立ち上がりわざわざ彼女の前まで歩いていく
大和敢助
お前の顔に書いてあるんだよ
大和敢助
" 辛い "ってな
刺刀
ッ……
大和敢助
言ってみろよ、俺らに
大和敢助
あの日何があったか、
違和感とか全部な

敢助くんはあなたさんの前でしゃがみこみ
顔を覗くように自分の頭を上に向けた
彼女の瞳には涙が映っていた

僕は小さく溜息をつきながら立ち上がった
諸伏
君の強引なやり方には
少々納得がいきませんが
大和敢助
おい
諸伏
それを除いても僕も共感です
諸伏
天知る、地知る、我知る、子知る
諸伏
誰も知らないだろうと思っていても
天地の神々は知っているし
私も君も知っている
諸伏
隠し事はいつか露見するものだから
良心に恥じない行動をとるべき
諸伏
彼女を庇っていても貴女にはなんの
得もないんです
諸伏
それどころか損ばかり
諸伏
もしかしたら今回、バレなかった
せいで今後危険な目にあうかもしれない
諸伏
あなたさんは何方を選びますか

そこまで話せば敢助くんは少し引いたような顔を
してこちらを見てきた
あなたさんは涙が引きぽかんとした顔で
こちらを見ていた
諸伏
なんですか、敢助くん
大和敢助
いや、お前の方が怖いなって
諸伏
そんなことないです
大和敢助
いやあるな、これは怖いぞ
大和敢助
なぁ、あなた
諸伏
意見を求めるのは違いますよ
敢助くん
刺刀
ふふっ…
刺刀
ははっ……
刺刀
バカらしい

そう呟く彼女は笑顔だった
先程までのムードは何処に行ったのだろう
そう思わせるくらいこの部屋をその笑い声で
明るくした
刺刀
……確かに庇う気は
少しあったけど
刺刀
そう言われたら話すしかないよね
刺刀
あの日普段通り買ってきてもらったのを
ストローで飲もうとしたんだけど
刺刀
いつものストック分が
丸々なかったんだよね
諸伏
丸々ですか?
刺刀
うん、2人ならわかると思うんだけど
いつも業務用買ってるから
そんな簡単になくなることはないんだよ
刺刀
この間補充したばっかだし

言われて想像してみると確かにあのストックが簡単に
減るとも思えないし減っていれば気付く
大和敢助
じゃあ、お前にアレルギー反応が出た
あの紙パックはどうやって飲んだんだ?
刺刀
それは…
刺刀
……
刺刀
汐莉が" くれた "ストローで
飲んだからだよ
諸伏
!!
大和敢助
それはほんとか!!?
刺刀
知っていたかのようにいつもと
同じストローを渡してきたんだよね
刺刀
あんだけ一緒に居るけど
汐莉にストロー買いに行ってるところ
見せたことないんだよね
刺刀
大抵家でバラにして持ってくるから
刺刀
分からないと思うんだけど……

そう言ってから一拍置いて口を開いた
刺刀
ただしこれは状況証拠なだけで
動かぬ証拠がない……だよね
大和敢助
あぁ、確かに今回害者である
お前の証言は何よりも重要だ
大和敢助
ただし、どんなときも
物的証拠が必要不可欠
諸伏
他に何かないですか?
刺刀
って言われてもなぁ……

だいぶ悩んだ後、何かを思い出したように
閉じていた瞳をゆっくりと大きく開け
刺刀
……ぁ、

という言葉をこぼした
大和敢助
なにか思い出したか?!
刺刀
いや…、思い出したというより
トリックが" 分かった "んだよ
諸伏
!!
刺刀
多分、2人もわかるんじゃないかな…
刺刀
最近、汐莉の机に粉物が落ちててね
刺刀
それが何かは知らないんだけど
刺刀
接着剤も机に出しっぱだった
大和敢助
……なるほどな
諸伏
そういう事でしたか

お互いが分かると敢助くんはスマホを取りだして
由衣さんに連絡した
大和敢助
上原、今すぐ被疑者候補を
連れて──────
諸伏
いえ、敢助くん
大和敢助
あ"?!
諸伏
……きっと今夜、来ますよ
諸伏
彼女が

僕はそう言いながらこの部屋に飾ってあるカレンダーを
見つめた


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