太宰は、先程の行動などなかったかのように淡々と話を進める。
わざと紳士的な礼を添えるが、口元には小さな嘲笑が浮かんでいる。
その自己紹介に、目の前の三人は一瞬引き、互いに視線を交わした。
彼らも順番に名乗る。
左からライ、バーボン、スコッチ──全て酒の名だ。
僕が「太宰」と声を掛けると、彼は面倒くさそうにため息を吐き、
「はいはい、やればいいんでしょ」とぼやきながらも本題に入った。
僕と太宰は重厚な赤いベルベットの玉座に深く腰掛け、
片肘を肘掛けに預け、指先で頬を支える。脚は優雅に組み、
その眼差しは細められ、相手の心の奥まで覗くように鋭い。
背後からは、中也の視線が獲物を狙う獣のように突き刺さる。
その瞬間、僕と太宰の眉がわずかに動く。
空気が一段重くなる。
僕は、ほんの少しだけ殺気を漏らす。
背筋を這い上がる冷気に、バーボンの額から汗が一筋、こめかみを伝う。
スコッチは持っていた札束を無意識に握りしめ、紙幣がくしゃりと音を立てた。
ライもポーカーフェイスを何とか保つが、瞬きをすることも無く二人から目線を外せないでいた。
太宰は小さく頷き、ゆるく笑った。
「『君たちが利用するのではなく、私/僕たちが利用するのだ』と」
その声は低く、容赦なく、確実に相手の心臓を鷲掴みにする響きだった。
バーボンは冷や汗をかきながら、掠れた声で「あ、ああ……わかりました」と返す。
僕は腰を上げ、三人に背を向ける。
彼らの足音が背後でぎこちなく響き、やがて遠ざかっていった。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。