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第9話

ウィスキー
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2025/08/17 01:11 更新


太宰治
やぁ、君たちは初めましてかな?




太宰は、先程の行動などなかったかのように淡々と話を進める。



あなた
確か自己紹介の前で止まっていたね
あなた
この包帯人間がポートマフィア最年少幹部、太宰治──僕の犬だ

太宰治
ちょっと?

あなた
それで、この帽子を被っているチビは中原中也。こっちも僕の犬だ

中原中也
誰がチビだ!

あなた
そして僕が太宰の幹部補佐、赤井あなたの下の名前です。……以後お見知りおきを




わざと紳士的な礼を添えるが、口元には小さな嘲笑が浮かんでいる。
その自己紹介に、目の前の三人は一瞬引き、互いに視線を交わした。



彼らも順番に名乗る。
左からライ、バーボン、スコッチ──全て酒の名だ。




中原中也
全部酒の名前だな

太宰治
しかもウィスキー
あなた
……まあ、それはどうでもいい




僕が「太宰」と声を掛けると、彼は面倒くさそうにため息を吐き、
「はいはい、やればいいんでしょ」とぼやきながらも本題に入った。




太宰治
さて──君たちは、一体なんの取引をしに来たのかな?



僕と太宰は重厚な赤いベルベットの玉座に深く腰掛け、
片肘を肘掛けに預け、指先で頬を支える。脚は優雅に組み、
その眼差しは細められ、相手の心の奥まで覗くように鋭い。
背後からは、中也の視線が獲物を狙う獣のように突き刺さる。



バーボン
僕たちは……ポートマフィアの配下になりに来ました
スコッチ
金も、用意してあります

中原中也
配下だとォ? 手前ら──
あなた
中也、ちょっと黙って

太宰治
何故、配下になりたいんだい?

ライ
ジンからの命令だ。ポートマフィアは使える、と。配下になれば、奴らを利用できるからだと」


その瞬間、僕と太宰の眉がわずかに動く。
空気が一段重くなる。

あなた
へぇ……僕たちを利用、か。面白いことを言うね、その“ジン”とやらは

太宰治
あなたの下の名前の言う通りだ。……面白い


僕は、ほんの少しだけ殺気を漏らす。
背筋を這い上がる冷気に、バーボンの額から汗が一筋、こめかみを伝う。
スコッチは持っていた札束を無意識に握りしめ、紙幣がくしゃりと音を立てた。
ライもポーカーフェイスを何とか保つが、瞬きをすることも無く二人から目線を外せないでいた。


あなた
……これも森さんの読みなのだろう


太宰は小さく頷き、ゆるく笑った。

太宰治
いいよ。今日から君たちはポートマフィアの配下だ
太宰治
そのジンという人に、こう伝えたまえ──







「『君たちが利用するのではなく、私/僕たちが利用するのだ』と」


その声は低く、容赦なく、確実に相手の心臓を鷲掴みにする響きだった。
バーボンは冷や汗をかきながら、掠れた声で「あ、ああ……わかりました」と返す。





太宰治
よし、話は済んだ。あなたの下の名前──三人を送り出せ

あなた
はいはい、わかりましたよ。幹部殿



僕は腰を上げ、三人に背を向ける。


あなた
着いてきな──ここから先は、君たちの足で帰るんだ





彼らの足音が背後でぎこちなく響き、やがて遠ざかっていった。


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