焦凍が家を出てすぐに眠りについた。
あなたはこれまでも高熱で寝込む時は毎回必ず同じ夢を見ていた。数年前のあの日、敵連合との決戦の日の夢だ。
現実ではヒーロー側が勝利し、平和な毎日を送れているが、あなたの夢の中では焦凍が負けて居なくなってしまうという現実とは違う夢。
目の前から焦凍がいなくなってしまうその瞬間に、いつも飛び起きるように目が覚める。
焦凍「お…起きたか…」
「…え?あれ、なんでいるの…?」
居ないはずの焦凍が目の前に居てあなたは驚く。
焦凍「あなたが心配だからみんなに早く帰れって言われて、色々巻で終わらせてきた」
「そうなんだ…」
焦凍「すげぇうなされてたけど大丈夫か?」
「うん、嫌な夢みた…」
焦凍「いつものか?」
「うん…」
焦凍はあなたのことを抱きしめる。
焦凍「安心してくれ、俺は居なくならねぇから」
「わかってるけど…怖かった…」
あなたは焦凍の背中に手を回すときゅっと服を握る。〇をなだめるように背中を優しく撫でた。
焦凍「まだ熱いな…」
「今朝よりは下がったと思うけど…」
体温計はまだ38.7℃と表示されている。
焦凍「やっぱりまだあるな…立てそうか?すぐ病院連れていく」
「大丈夫だよ。立てる」
その後あなたを病院に連れていき、感染症の検査もしたが過労による免疫低下での風邪だと分かり、すぐに帰宅した。焦凍はあなたを再びベッドに寝かしつけた。
焦凍「腹減ってねぇか?」
「少し減ったかも…でも喉が痛いから食べられるかどうかはわかんない」
焦凍「ちょっと待ってろ」
焦凍は立ち上がると寝室を出てキッチンへと向かった。部屋に冷蔵庫を開閉する音が響き、何かを調理する音が聞こえ始めた。
あなたは重い身体を起こして立ち上がると、キッチンにいる焦凍に話しかける。
「何作ってるの…?」
焦凍「お粥…さっき調べたレシピなんだが、これなら俺にも作れそうだと思ってな。…もしかしてお粥嫌だったか?」
「そんな事ないよ。でも仕事終わって疲れてるだろうし、宅配でも良かったのに」
焦凍「風邪ひいて喉痛ぇ時に食べられそうなもん、宅配だとないだろ。こういう時の為にあなたに料理教わってやってんだ。たまには頼ってくれ」
「…わかった、ありがとう」
焦凍「ほら、出来上がるまでは横になってろ」
焦凍に促されて再びベッドに戻った。少しずつ料理を覚えているとはいえ、まだまだ心配ではある。ただ、焦凍の優しさはすごく嬉しかった。
数十分後、寝室に出来上がったお粥を焦凍が持ってきた。
焦凍「わりぃ、遅くなっちまった。一応味見もしたから多分大丈夫だと思うが…食べるのしんどかったら無理せず残してくれ」
焦凍が土鍋からお粥を取り分けてあなたに渡す。
「いただきます」
喉の痛みを心配して少量口に運ぶ。朝からゼリーと水しか飲んでいないあなたの体に、久々の食べ物はやけに美味しく感じた。
「美味しい…」
焦凍「良かった…まだあなたみたいに美味くは作れねぇけど」
「そんな事ないよ。すごい美味しい。ありがとう」
「ご馳走様でした」
朝からまともに食べられていなかったあなたはお粥を完食した。食べ終えた食器をお盆に乗せて、キッチンに持っていこうと立ち上がろうとする焦凍の袖をきゅっと掴む。
焦凍「どうした…?」
「…いかないで…」
焦凍「ん?」
「一緒にいて…」
元気な時のあなたの口からはなかなか出ない甘えるような声色を聞いて、食器を再び床に置いて座り直した。
焦凍「大丈夫だ、あなたが寝るまで一緒に居る」
焦凍はあなたの頬に手を添えて、優しく微笑んだ。
「ごめんね、わがまま言って」
焦凍はあなたのベッドに入り抱きしめる。まだまだ熱の高いあなたは涙目で焦凍を見つめるが、普段見られないあなたの弱々しい姿に思いがけずドキッとしてしまった。
焦凍「気にしなくていい。そういう日もあるだろ」
クールに振舞っているつもりが、焦凍は理性を保つのに必死だった。あなたが元気な日はそのまま手を出してしまう日もあるが、今日はそういう訳にはいかない。それに、こんな状態のあなたに欲情している自分を悟られるわけにもいかない。そんな複雑な気持ちを隠しながら
ただひたすら、身体の熱いあなたを抱きしめながら頭を撫でていると、あなたはいつの間にか眠ってしまっていた。
焦凍(寝たか…)
あなたが起きないようにベッドから出ると、洗うつもりだった食器を再びキッチンに運ぶ。食器を洗いながら明日のことを考えていた。
焦凍(明日は何か別のもの作ってやろう…何作るか調べねぇと)
いつも一緒に入るお風呂も焦凍1人だとすごく浴槽が広く寂しく感じた。風呂から出て寝る前の準備をして、あなたの寝ている寝室へと入る。あなたは変わらず頬を赤くして、高熱に耐えながら寝ていた。
焦凍はあなたの隣に横になると、熱で汗ばむあなたの額を手で拭う。
焦凍「早く良くなるといいな」
焦凍はあなたを抱きしめながらそのまま眠りについた。
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数日後。完全に体調が回復したあなた。今日から仕事にも復帰し、久々の任務を終えて焦凍と帰宅した。
夕食とお風呂を済ませ、ベッドに入ろうとするあなたのことをそのまま押し倒した。
「焦凍…くん?」
あなたの上に覆い被さる焦凍。
焦凍「しばらくお預け食らってたから、今日はもういいだろ」
「…しょうがないなぁ。ずっと我慢してたもんね」
焦凍「…バレてたのか?」
「バレバレですよ」












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。