第87話

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2026/09/01 01:28 更新
康二
康二
なぁなぁ、しょっぴー! これ見てや、めっちゃ美味そうじゃない?
テレビ局の廊下で、俺はたまたま通りかかったしょっぴーを捕まえて、スマホの画面を突きつけた。
最近見つけた、今度、行きたいなと思っていた焼肉屋の動画や。
翔太
翔太
んー? ……うわ、何これ。肉の厚みヤバ。美味そう
康二
康二
やろ!? 今度一緒に行かへん? しょっぴーの奢りで!
翔太
翔太
なんで俺の奢りなんだよ。……まぁ、行くなら舘さんも誘ってやるか
康二
康二
やったぁ! しょっぴー大好きやわ!
テンションが上がった俺は、いつもの癖でしょっぴーの肩に腕を回し、顔を近づけてキャッキャと笑いかけた。
しょっぴーは「近い、暑苦しいわ!」なんて言いながらも、顔をクシャッとさせて笑っている。
その時、背後から。コツ、コツ、と、やけに重たい足音が近づいてくるのに気づいた。
同時に、ゾクッと背筋が凍るような、冷たい視線が肌を刺す。
蓮
蓮
……康二、何やってんの
低くて、少し低音の響きが強い声。
振り返ると、そこにはポケットに両手を入れたまま、眉間にうっすらとシワを寄せためめが立っていた。
いつもなら俺を見つけると、ふにゃっと犬みたいに目を細めて笑うのに、今の目は完全に『笑っていない』。
康二
康二
あ、めめ! 戻ってたん? 今なぁ、しょっぴーと焼肉の――
蓮
蓮
しょっぴー、マネージャーが探してたよ
めめは俺の言葉を遮り、しょっぴーに真っ直ぐな視線を送った。
その瞳の奥にある無言の圧力を、鋭敏なしょっぴーが察知しないわけがない。
翔太
翔太
え? あ、あぁ……そう。ありがとう
しょっぴーは「俺、何も悪くないからな?」と言いたげな顔で俺と目黒を交互に見た後、そそくさとその場を立ち去ってしまった。
置いていかんといてや、しょっぴー!廊下に残されたのは、俺とめめの2人だけ。
めめは無言のまま、俺の腕をガシッと掴んだ。大きな手のひらの体温が、衣装の上からでも熱いくらいに伝わってくる。
康二
康二
……ちょっと、めめ? 手、痛いって
蓮
蓮
こっち来て
有無を言わせない力で引っ張られ、俺たちは誰もいない資材置き場の陰へと連れ込まれた。
壁に背中がトン、と当たると同時に、めめの大きな体が目の前を塞ぐ。
完全に逃げ道を塞がれた形や。
康二
康二
な、何怒っとん? しょっぴーとご飯の話してただけやで?
蓮
蓮
怒ってないよ。……ただ、ちょっとね
めめはふっと息を漏らすと、俺の肩にぽんと顎を乗せて、俺の体を包み込むようにぎゅっと抱きしめてきた。
耳元で聞こえる低い呼吸音が、鼓膜を甘く震わせる。
蓮
蓮
康二がみんなのこと大好きなのも、今のスキンシップがただの愛情表現なのも、分かってるよ。分かってるんだけどさ……
めめの大きな手が、俺の背中を愛おしそうにゆっくりと撫でる。
蓮
蓮
……やっぱり、目の前で他の男にベタベタされると、軽く妬いちゃう。5年経っても、俺、そういうの器用にスルーできないみたい
康二
康二
っ……!
ぼそっと、耳元で呟かれた本音。
あかん、かっこよすぎる。
ただ怒るんじゃなくて、俺の性格をちゃんと理解して許容してくれた上で、「それでも妬いちゃう」なんて、少し不器用そうに白白と言われたら、愛おしくてたまらんくなってまう。
康二
康二
……ごめん。めめが一番大好きやで? 寂しい思いさせてごめんな
俺が降伏して、めめの広い背中に腕を回してポンポンと叩くと、肩に乗っていためめの顔がゆっくりと上がった。
さっきまでの少し切なそうな顔はどこへやら、満足げな、ちょっと意地悪な笑みを浮かべている。
蓮
蓮
じゃあ、今日の夜、俺の家来て。ちゃんと『大好き』って、言葉と態度で上書きしてよ
康二
康二
おまっ、そういうとこ……!
やっぱり、この男には敵わん。
真っ赤になった俺の額に、めめは優しくキスを落とした。
ヤキモチの特効薬は、いつだって俺の甘い言葉だけみたいや。

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