康二 side
レコーディングを終えて、俺はめめとラウールといた。
なんとなく心ここに在らずの返答だったけど、あえて何も触れなかった。
俺とラウールの後ろをついてくるめめは、買い物の最中もただ居るだけで特別口を挟まなかった。
・・・とはいえ、本人にどう問うのが正しいのか分からず、ラウールに問いかけてみた。
ラウールは悪びれもなくそう口にする。
出来へんから、ラウールに聞いとるのに´д` ;
そんな俺たちの会話を知らないめめが、ふいに声をかけてきた。
入り口へと向かうめめの後ろ姿を見ていると、ラウールが口を開いた。
思い当たる節があるような・・・ないような・・・。
ただ、ラウールの撮影を見て「俺も撮ってほしい」と言った時も。
撮影中に見せた表情も。
確かにいつもと違って見えた。
好奇心に負けて、タコパ中に俺とラウールはめめに質問する。
それは俺たちの予想を反する返答だった。
家についてタコパの準備をして、3人でテーブルを囲む。
出来上がったたこ焼きを皿にとり、食べ始めてしばらくして・・・。
口火を切ったのは、ラウールだった。
なんの躊躇(ちゅうちょ)もなく、話を切り出せるラウールが俺にしたら、ただただすごい奴に見えた。
無自覚にやってるあたり、めめだと思うf^_^;
めめは箸を置いて、ゆっくりと話し始めた。
めめの表情はいつになく明るくて、幸せそうで。
それはずっとそばで、めめを見ていた俺ならわかる変化だった。
俺の問いに返答したのは、ラウールで。
めめは静かにそれを見つめていた。
カメラ越しに見ためめの表情が、ずっと気になってた。
レンズ越しだからこそ感じ得るものがあることを俺は知ってる。
メンバーたちと一緒に撮るめめの表情とは明らかに違っていたから。
カバンから取り出した、めめとあなたの名字さんの写真をテーブルに並べてみせ、俺は続けた。
こういうところが、やっぱりめめなんやと思う。
いつか確信に変わる思いでも、現状で確信が持てない以上不確かなことは絶対言わない。
こういうときこそ、認めてしまえば楽やのに・・・。
写真を見つめる俺とめめの隣で、怖い顔をしているラウール。
ラウールのテンションが予想以上に上がってしまった現状に俺は慌てて話を止めた。
畳みかけるように、準備をして、ラウールを連れて部屋を出ようとすると、めめが俺に問いかけてきた。
そう言って、家の扉を閉めた。
俺がラウールを駅まで送り届けて自宅に戻ったのは、それから15分程してからだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。