紅茶を口に含んだ。
いつも通りの温かい味が身に沁みる。
女は、目の前にいる男の顔を見て、少しだけ気持ちが昂ったように見えた。
この男が人の誘いに乗ることはよくあることだ。
しかし、女と一対一で出かけることは少なかった。
女は男に向き直った。
にこにことした朗らかな笑顔で女は男に言葉をかけた。
男も優しい口調で、誰がどこから見ても「お似合いのカップル」だっただろう。
高度な恋愛心理戦に見える。
だが、松山昂輝は頭のねじが2本くらい抜けているので恐らく素で喋っている。
月東蘭も天然なのか計算なのかは不明だが雰囲気がふわふわとしている。
つまり、計算されつくした会話ではないのだろう。
丁寧に会話を重ね、彼の好みを紐解いていく姿は素敵だった。
彼は感謝を伝えた。
女は男の好みをふまえ、おすすめ料理を探していた。その姿に嘘偽りはないように思えた。
最終的に彼女はあんバターのパンケーキをお勧めしていた。
彼は笑顔で感謝を伝えたのち、そのメニューを頼んでいた。
パンケーキを待っている間、2人は会話に花を咲かせていた。
「夏芽」「涼」「矢切先生」
会話に出てくる名前はさまざまであった。
パンケーキを口にしながら、談笑を交わす姿は「級友」という言葉がぴったりで、裏切り者のことなど頭にもよぎっていないようだった。
松山昂輝が月東蘭に送る視線には、松山昂輝の感情のすべてが埋まっていたように感じた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。