夕コに殴られた頬の痛みがいつまで経っても
取れないから
今は氷嚢で頬を冷やしている
そう、俺は夕コに対し
「前の街に戻ろうと思う」と言っただけだ
ここ最近夕コが起きてこなかったから、言う
タイミングを逃しただけなんだけどな
他のメンバーや構成員はこんな反抗的じゃ
無かったのに…
マズイ、これお説教パターンだ
隣町で俺がやらかした時もこんな感じだったな…
んー…無いな
俺が帰らないと、お前等がどうなるか
分からねぇんだよ
口論を続けていると、この場所
"ゲーセンアジト"に1人入ってきたのか
ドアが音を立てて開いたのが分かった
その正体はケインでも音鳴でも誰でもなく。
俺はソイツに身震いしてしまった
なんで?ロスヨントスに行けば皆んなの事
見逃してやるって…
何で…何で何でなんでなんでなんで
俺の頭の中は焦りと動揺でいっぱいだった
夕コが圧をかけてそう言うも、彼女は1ミリ
たりとも気にかけていない様子だ
彼女はポーカーフェイスを崩さないまま、
こちらへ話しかけてくる
今すぐ夕コをここから出さなきゃ
そう思い、ソファに預けていた体の軸を戻そうと
するも
俺の手足は恐怖で小刻みに震えるだけで、
思い通りに動かない
声を出そうとするも、出せない
あぁ、怖い時って本当に声出ないんだ
夕コはそう言い、彼女に銃口を向けた
俺…俺にできる事は?何かないのか?
今日はなぜか無線も、スマホも使えない
瞑想しても直らなかったから、これはきっと
街全体で起こっている事なんだろう
全く動かない俺を気にかけて、声をかけてくる
その顔はどこか不思議そうで、困惑している
ようなものだった
俺は腹の底から声を上げようとする
まぁ、実際にはか細い声しか出なかったんだけど
その瞬間、体を引き裂くような鋭い痛みが
全身を襲った
氷嚢を持っていた手にも力が入らなくなり、
とうとうソファから転げ落ちてしまう
袋の中に入っていた氷と水が床に広がってゆく
その水が段々と赤色に染まっていくのが見えた
段々と眠くなってくる
これ、寝たらマズイんじゃ…
抵抗も虚しく、俺はその場で意識を手放した













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。