「 ……え、買い出し……? 」
メイド服のスカートをそっと直しながら、
あなたは首を傾げた。
「 いやだってさ、こっからお店まで
ちょっと遠いし、独りで持って帰るの
キツいじゃん? で、山ちゃんもはるちゃんも
裏で準備詰まってるし(
「 じゃあ、俺が行きますよ 」
言葉を遮るように、奥の机で
座っていた千早が立ち上がった。
「 えっ、千早? お前別のクラスだろ? 」
清峰が目を丸くする。
「 そうですね。でも、心配です。
女の子一人じゃ、何かあっても
言わなそうだし 」
「 お、女の子って……私……? 」
唐突な名指しに、
思わずあなたは目を見開いた。
千早は無表情のまま、軽く首をすくめる。
「 別に深い意味はありません。
荷物持ちってだけです 」
そう言いながら、足早にドアの方へ向かう千早。
あなたも、戸惑いながらその後ろを追った。
──
「 ……なんか、変な空気だったね 」
「 ん? 」
並んで歩きながら、ふと
あなたが口を開くと、
千早はポケットに手を
突っ込んだまま、空を見上げた。
「 別にいいでしょ。俺は行きたくて来た 」
「 ……ふふ、ありがとう 」
「 ……! 」
ふいにこぼれた笑みに、
千早の足が一瞬止まった。
「 ……やっぱ、笑った方がいい 」
「 え? 」
「 お前、最近よく笑うようになった 」
「 そんなこと…… 」
「 嬉しいんだよ。……俺が 」
その声は、
風にかき消されそうなほど、静かだった。
あなたは何も言えなくて、
ただ、ほんの少しだけうつむいた。
その時、スーパーの袋を手渡そうとした拍子に、
二人の指先がふれて──
「 っ……! 」
互いに反応して、手を引っ込めた。
( ……なんだろう、
こんな些細なことなのに )
心臓が、いつもより
ずっと速くなってる気がした。
「 あなたは 」
唐突に、千早が口を開いた。
「 ほんとは、誰にも触れて
ほしくないとか、思ってる? 」
「 ……え? 」
「 なんか、そういう目してるときあるから。
……昔の俺がそうだったから、わかる 」
あなたは答えられなかった。
けど、千早は何も言わず、
そっと買い物袋を持ってくれた。
そして、小さく笑った。
「 でも、俺には……
ちょっとだけ、許してくださいね 」
その言葉に、
あなたは思わず目を見開いて──
( ……ずるいよ、千早くん )
どんどん、心が引き寄せられていく。
──続く。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!