第122話

114話「それは知らない人」
5
2025/03/06 23:00 更新
世界に、戦慄した空気が走った


遠くから鴉の鳴き声がする

それはどんどんと、こちらに近づいてくる様だ
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
殿下!!とりあえずそいつをヒースクリフに渡してください!
リスタの出現にそれぞれは息を呑む


勿論、夜蘭もその例外ではなく、

体をぶるりと震わせた
夜蘭
夜蘭
お前、そいつが誰だかわかってんのか
夜蘭が気迫迫る表情で訴えかけるも、

リスタはまだ状況を掴めない
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
ヒースクリフさんが死ねば、もうこの人は止まりません
ヒースクリフの目線がじっとりと、

ドーパミンを抱える夜蘭に注がれた

ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
また、俺から奪うのか
夜蘭の顔が歪む

口をはくはくと動かすが、言葉は出てこない
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
俺はいつまで奪われなきゃいけない?
その全ての空を暗く覆い尽くしてしまいそうな瞳を、

夜蘭は苦しげに見つめ返す


「ヒースクリフ、なにか誤解がある」


そう言おうとして、脳裏に火花が散った


「真実なんてどうでもいい、

俺はただお前が恨めしくて仕方がないんだからな」
言葉は喉に突っかかり、

ただひたすら胸によどみが溜まっていった
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
もう、何も奪わせない
夜蘭の心を、ひびが貫く


笑い声がした、

それは夜蘭の笑い声だった
夜蘭
夜蘭
何もかも、俺らはすれ違ってるな
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
殿下・・・っ!
まともに話さず、早く身柄を!
杏里はその場から目をらす


こうするしか無かったのだと、

よく理解していたから
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
黙れ
夜蘭はドーパミンの首に、

手を掛けた


しかし、ヒースクリフ以外の者は誰一人

目を丸くして心拍数を上げて、

固まったように動かない
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
放せ、触るな!!!
杏里は夜蘭の動向に気を配る

まるで何が起こっているか、全て理解しているように


長い時間が経つ

それは真実か、或いは精神世界か


夜蘭は雨音の様に静かに、

ぽつりと呟いた
夜蘭
夜蘭
俺はお前の悪魔だよ・・・ヒース
ヒースクリフは、必死に歯軋りをさせる


どうしたらドーパミンを奪還できるのか、

知略を巡らせているようだ
夜蘭
夜蘭
っ、ふー、ふっ、
頭が割れそうになる

ストレスが体をむしばんで仕方ない


本当にこれが正しいのか

取り返しがつかないんじゃないか

もっと別の道があるんじゃないか
夜蘭
夜蘭
うるさい・・・!
しかし、壁は目の前だ

もう逃げることは出来ない

選ばなければいけなかった


夜蘭は善悪をかなぐり捨て、ぶん殴り決断する


大きく、

息を吸った
夜蘭
夜蘭
...化雪
リスタ・ナイトレード
リスタ・ナイトレード
で、!
すると、その言葉は風に乗り、

空気に染み込むように、溶けていく


夜蘭は肩で息をした

安堵と恐怖が体を襲う、涙が溢れそうになった


しかしそんな夜蘭の体を、

それぞれが寄り添って抱きしめる



化 雪シャキャラ

それはイノベアの魔術師に許された

最後の催眠魔法
夜蘭
夜蘭
・・・っ、ヒース、ごめんな
 そんな音色を確かに覚えながら、

ヒースクリフは意識を失った


それから先はもう、

何も見えない、思い出せない
約束だ

俺は必ず、またお前に
_____それはこの王国の帝都イノベアに、

革命をもたらす切なき日


桜が舞った

それは、名前も知らぬある春の日


帝都の教会では、戴冠式たいかんしきが行われている

その外では、たくさんの人が何かを待ち構え、

賑わっていた
広報屋 胡座
広報屋 胡座
さて!この王国の救世主様がお見えになります!
その場にいる報道者レポーターは、

まだ少し肌寒い空気を感じ、鼻を赤らめている


大きな教会の下には、

赤いカーペットが引かれていた
広報屋 胡座
広報屋 胡座
異国からいらっしゃた勇者様、
杏里様のお見えです....!!
協会の大きなステンドガラスの囲む開放的な入口から

数人が姿を現し、大勢は歓声を上げる
広報屋 胡座
広報屋 胡座
笑顔が素敵ですね〜
和やかな春の雰囲気


人々は笑顔に満ち溢れ、

些細な悪は見逃されそうな気がした



そんな最中
広報屋 胡座
広報屋 胡座
っ!?
杏里に目の前に、

純白の剣が突き刺さる


どこからが聞こえるのは、低い声
????
騙されるな、衆生しゅじょう共よ
その声とともに、

杏里ただひとりが悠々と歩むホワイトカーペットに、

男が舞い降りる
広報屋 胡座
広報屋 胡座
きゃっ、あれは、一体誰なのでしょうか!?
周りからは、不安の声が上がった
広報屋 胡座
広報屋 胡座
なんですって!?え!?皆さん!只今情報が入りました!
広報屋 胡座
広報屋 胡座
こちらの謎の男、かつて悪魔として処刑された、オーキッド・K・ナイトレード様のようです!?
広報屋 胡座
広報屋 胡座
え、様はいらない?あっもう、処刑されたんですもんね、
通信魔法の中継最中にも、

男、オーキッド・K・ナイトレードは語り始めた
夜蘭
夜蘭
俺はめられた。誰が俺を悪魔だと証明できる!?こいつが、真の悪魔だ!
そういい、夜蘭は杏里の羽管を切りつけ、

羽を露出させる
杏里
杏里
痛っ、
その姿に、国民は悲鳴をあげた
広報屋 胡座
広報屋 胡座
なんということでしょうか!!
広報屋 胡座
広報屋 胡座
なんと、帝王となるはずだった男は悪魔です!悪魔なのです!!
広報屋 胡座
広報屋 胡座
国民を騙していたのでしょうか、それならばいつから!世界の大敵魔王を討ち滅ぼしたのも、まさか・・・!!
混乱、悲鳴、中継、何かが引きづられる音

世界は混乱に満ちた






_______そんな最中




ガラン・ヒースクリフは目を覚ます
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
・・・、
目に映るのは、けやき色の天井と、大きな本棚


そして、騒がしさと春の香りを運ぶ、

白い窓だ
しかし、それはすぐに塞がれた
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
これは、花びら・・・?
そうしてヒースクリフはやっと、

自分が大きく白い、

ベットに寝かされていたことにきづく
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
ここはどこだ?
眉をひそめ体を動かそうとすると、

すぐに桃色の花弁は離れていった
花弁を目線で追いかける

そして
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
・・・誰だ?
目の前には椅子に座り、

眠りこけたサザン・ドーパミンがいた
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
見覚えがない、知らない人
男の目尻は赤く腫れ、濡れている


かすかにかかった毛布は今、

彼の肩を滑り落ちようとしていた
ガラン・ヒースクリフ
ガラン・ヒースクリフ
・・・はぁ、一体何があったんだか
そう呟いて、ヒースクリフは薄い毛布を掛け直す


まだ早い、麗らかな春の訪れを感じながら

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