遡ること、2時間前___________。
降谷side
降谷 「............たしか、ここだよな。」
諸伏 「あぁ、前に見せてもらった地図はここだ。」
萩原 「..........ま、あからさまここだよね〜。」
”立入禁止”と書かれたテープで塞がれた大きな門の前に三人で立ち、じっと見る。
降谷 「まだあなたたちからの連絡も来てないが、中に入るか?」
諸伏 「.....ッえ、入る、のか!?」
降谷 「だって入んないと調査できないだろう?」
外から見ようとも思ったけど、やっぱ直接見ることに越したことはないからな。
萩原 「降谷ちゃんはたまーに俺らでもやらないことやろうとするもんな。」
降谷 「えぇっ、!?そんなことない........と、思いたい、。」
諸伏 「ぷはっ、ちょっと自覚あるんじゃないか。」
降谷 「なッ、笑うな!!」
萩原 「.......まぁ俺も中に入んなきゃなんもわかんないと思うし、やっぱ入るっきゃないっしょ。」
諸伏 「あぁ、そうだな。」
鬼塚教官には怒られるだろうが、この事件を解決する事ができるのならば、喜んで受け入れよう。
張り巡らされたテープをスッと上に上げ、僕ら三人は家の中へと進んでいった________。
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萩原 「.........うわ〜、ひでー有様だな、。」
降谷 「......あぁ。」
家の中は、引き出しの中に入ってあったであろう書類や、洋服など色々なものが散乱し、部屋中心には被害者がいたであろう血の跡が残っていた。
三人 「.....................。」
その場で黙祷をし、ポケットに入れていた手袋をはめる
萩原 「..............ふぅ、にしても被疑者はこんな派手なことしといてまだ見つかってねぇのか。」
降谷 「僕もそこは疑問に思ってたんだ。凶器すら見つかってないなんて、.............仕事が早すぎる。」
痕跡が残ってないってことは、殺人に慣れているって事なのか?
それとも、................他のなにか要因が、?
降谷 「とりあえず、手がかりになりそうなものを探そう。」
諸伏 「あぁ。」
萩原 「とりあえず目につくものと行ったらやっぱこの散乱した部屋だけどー、.......これは、金目当てってことなんだよな。」
諸伏 「あぁ、この家大分大きいし、多分そうだろ。」
降谷 「................。」
萩原 「金庫はどこだ〜......っと、あのデカいやつか。」
隣の部屋の和室に置いてある傷一つ付いていない大きな金庫は、いかにも金塊や金が置いてあるようだった。
.........さすが資産家、だな。
萩原 「前に立つと更にデカいな。」
諸伏 「あぁ、それに大分きれいだな。最近置いたものなのか?」
.............きれい、?
降谷 「...........それ、おかしくないか?」
諸伏・萩原 「...............え?」
降谷 「なんでこの金庫に傷一つ付いていないんだ?」
諸伏 「...............どういうことだ?」
降谷 「この部屋中、棚や引き出しの中身が荒らされて、散乱している。普通に見れば、強盗が入ったと見れるように。実際、僕らもそう感じただろう?」
諸伏 「あ、あぁ。でも、それと金庫がきれいだということになんの関係が?」
降谷 「おかしいと思わないか。この犯人は強盗。なぜ棚ばかり荒らす必要がある?」
萩原 「棚の中にだって金目の物があってもおかしくはないだろう。」
降谷 「確かにな。.............だが、金庫という宝を目の前にして、さっさと消えてしまう犯人はいるだろうか。」
諸伏・萩原 「.............、ッッ、!!!」
そう、僕がずっと感じていた違和感。
この大きな金庫は、隠れるようには置いていない。中に入って、少し歩けば容易に目に入る。
犯人たちもこの金庫には気づいているはずだ。..............なのに、
降谷 「..........犯人は、本当に”強盗”だったのだろうか?...それとも、強盗だと”思わせている”のか?」
萩原・諸伏 「...............。」
降谷 「________これだけ犯行に長けた犯人が強盗よりも優先した事はなんだ?」
............どちらにせよ、これが単なる事件ではなさそうだな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!