第7話

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2026/03/14 02:20 更新


 三人の声が重なった瞬間 、 部屋の空気がずしりと重くなった 。


 逃げ場を塞ぐように 、 土方さんは腕を組み 、 沖田くんはゆらりと立ち上がり 、 


 近藤さんはなぜか感極まった顔で私の両手を握りしめる 。




近藤 勲
 いいですかお嬢さん 。 江戸の治安を預かる我々が 、 
 身寄りのない女性を放り出すわけにはいかない ! 
近藤 勲
 君の安全が確認できるまで 、 
 ここ真選組屯所で全面保護……いや 、 共同生活だ ! 
(なまえ)
あなた
 ...  えっ 、 ? 
(なまえ)
あなた
 キョウドウセイカツ  ...    
土方 十四郎
 おい近藤さん 、 語弊があるだろ 。 
 ……だが 、 まあ 、 行き場がねぇならここにいろ 。 
土方 十四郎
 その方が 、 あの『夜兎』のガキを探すにも都合がいい 


 土方さんは煙草の灰を落とし 、 鋭い視線を私に向ける 。


 その瞳には 、 単なる保護対象を見る以上の 、 熱い独占欲が滲んでいた 。



沖田 総悟
 ふぅん 、 土方さんもたまにはいいこと言いやがる 。 
沖田 総悟
 ……ねぇ 、 あんた 。 俺の隣の部屋空いてまさァ 。 
 夜中に神威の夢を見てうなされたらいつでも俺が『慰めて』あげやすぜ ? 


 沖田くんが私の耳元で低く囁く 。


 その吐息に肩が震えると 、 彼は満足そうに口角を上げた 


土方 十四郎
 ちょ 、 総悟 ! 変な気を起こすんじゃねぇ ! 
土方 十四郎
 …いいか 、 お前は今日から俺の……俺たちの監視下だ 。 
 勝手な外出は許さねぇからな 


 土方さんの言葉は「命令」の形をとっていたけれど 、 その耳たぶがわずかに赤い 。


 神威を追って来たはずなのに 。


 私はいつの間にか 、 江戸で一番恐ろしい「番犬」たちの檻の中に入れられてしまった 。











 それから数日 。



 私の生活は一変した


 朝 、 目を覚ませば近藤さんが「朝食だ!」と私の分まで豪華な御膳を用意し
 (ついでに結婚届を隠し持っている) 、


 日中の買い出しには 、 土方さんが「パトロールのついでだ」
 と言い張り 、 マヨネーズが並ぶ棚を素通りして私の荷物を持ってくれる 。


 夜 、 屯所の廊下を歩けば沖田くんが背後から音もなく現れ 、
 「逃げようなんて考えちゃダメですよ」と 、 首筋を冷たい指でなぞっていく 。



(なまえ)
あなた
 ...  神威を 、 追いかけに来たんじゃなかったけ  ...    


 思わず口から漏れた独語 。


 その時 、 空を切り裂くような轟音が響き屯所の屋根が吹き飛んだ 。



神威
 あはは 、 何それ 。 
神威
 俺の可愛いおもちゃを 、 随分と安っぽい犬小屋に閉じ込めてるじゃないか 


 土煙の向こう 。


 オレンジ色の髪をなびかせ返り血で真っ赤に染まった番傘を肩に担いで 、 神威が立っていた 。


 彼の目は 、 笑顔の裏で見たこともないほど冷たく据わっている 。


 数年ぶりの再会 ___



神威
 返してもらうよ 。 そいつは 、 俺を追いかけるためだけに生きてるんだから 


 神威が傘を向けた先には 、


 すでに抜刀した土方さんと 、 バズーカを構えた沖田くん 、 


 そして刀を正眼に構えた近藤さんがいた 。

土方 十四郎
 悪いが 、 うちの『預かり物』はそう簡単に返せねぇんだわ 。 
土方 十四郎
 ……夜兎のガキだろうが 、 叩き出す 


 土方さんの低い声が響き 、 真選組と神威の 、 私を奪い合う最悪の戦いが幕を開けた 。

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