第5話

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2026/03/13 23:56 更新


 神楽の泣き声が響く港を飛び出し私が潜り込んだのは 、 密輸船の狭い貨物室だった 。


 金もあてもない 、


 あるのは神威を追う執念と 、 バカと同じ「夜兎」の血だけ 。



 おい 、 ガキ 。 
 ……夜兎か ? 


 寄港したならず者の星で 、 私は傭兵団に拾われた 。














 いや 、 「買われた」という方が正しい 。 


 私が夜兎だと知ると 、 大人たちは下卑た笑いを浮かべて戦場へ放り出した 。








 殺せ 。 殺さなきゃ 、 お前が死ぬんだよ !! 


 突きつけられたのは神威が持っていたのと同じ 、 重い傘 。




 初めて人を手にかけて返り血を浴びた夜 、 私は吐き気が止まらなかった 。




 神楽の温かい手の感触が 、 自分の血塗られた手で上書きされていく恐怖 。







 戦場を渡り歩くうち 、 私の瞳からは光が消え代わりに鋭い殺気が宿るようになった 。


「烙陽の生き残り」として 、 私の名は裏社会で少しずつ知られ始める 。


 ある時は 、 春雨の末端組織と衝突し神威の噂を耳にしたこともあった 






 第七師団の団長は 、 化け物だ 。 
 親殺しの 、 狂ったガキだよ 


 その噂を聞くたび 、 胸の奥がチリりと焼ける 。


 会いたい 。 会って 、 あの約束を破った横面を張り飛ばしてやりたい 。


 けれど 、 今のままの私じゃ 、 彼の視界にすら入れない 。



(なまえ)
あなた
 地球  ...   行こう  ...  侍の  ...     


 数年後 、 ボロボロになった傘を杖代わりに 、 私はようやく地球行きの船のチケットを手に入れた


 鏡に映る自分は 、 あの雨の日の少女とは別人のように冷ややかな顔をしている 。


(なまえ)
あなた
 待ってて  ...  神楽 、 神威  ...   ! 


 私は 、 江戸の空を見上げる 。


 そこは 、 夜兎にとっては毒である「陽の光」が降り注ぐ場所 。


 けれど今の私なら 、 その光に焼かれながらでも二人を見つけ出せる気がした 。








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