神楽の泣き声が響く港を飛び出し私が潜り込んだのは 、 密輸船の狭い貨物室だった 。
金もあてもない 、
あるのは神威を追う執念と 、 バカと同じ「夜兎」の血だけ 。
寄港したならず者の星で 、 私は傭兵団に拾われた 。
いや 、 「買われた」という方が正しい 。
私が夜兎だと知ると 、 大人たちは下卑た笑いを浮かべて戦場へ放り出した 。
突きつけられたのは神威が持っていたのと同じ 、 重い傘 。
初めて人を手にかけて返り血を浴びた夜 、 私は吐き気が止まらなかった 。
神楽の温かい手の感触が 、 自分の血塗られた手で上書きされていく恐怖 。
戦場を渡り歩くうち 、 私の瞳からは光が消え代わりに鋭い殺気が宿るようになった 。
「烙陽の生き残り」として 、 私の名は裏社会で少しずつ知られ始める 。
ある時は 、 春雨の末端組織と衝突し神威の噂を耳にしたこともあった
その噂を聞くたび 、 胸の奥がチリりと焼ける 。
会いたい 。 会って 、 あの約束を破った横面を張り飛ばしてやりたい 。
けれど 、 今のままの私じゃ 、 彼の視界にすら入れない 。
数年後 、 ボロボロになった傘を杖代わりに 、 私はようやく地球行きの船のチケットを手に入れた
鏡に映る自分は 、 あの雨の日の少女とは別人のように冷ややかな顔をしている 。
私は 、 江戸の空を見上げる 。
そこは 、 夜兎にとっては毒である「陽の光」が降り注ぐ場所 。
けれど今の私なら 、 その光に焼かれながらでも二人を見つけ出せる気がした 。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。