第20話

ジンロウゲーム Ⅱ
948
2018/12/31 09:08
『人狼』




















人狼..か...


初っぱなから人殺しになれっていうのかよ...





















どうすれば...





















花江 結
楓君?
片岡 楓
わっ!
片岡 楓
な、何ですか...?
びっくりした...
花江 結
もー。さっきから呼んでるのにー。
先輩はそう言って、頬を膨らませる。
片岡 楓
す、すみません...
花江 結
カード、何だった?
いや、聞くのアリなんですか?
片岡 楓
安定の村人です。
俺は勿論嘘をついた。
片岡 楓
先輩は?
花江 結
あー。私?私は...






















『人狼だよ。』

















...え?

いや、言ったら駄目でしょ。



あ、もしかして...
片岡 楓
人狼じゃないんですね。
花江 結
お!何で分かった?
片岡 楓
本当に人狼だったら、
人狼って言ったらゲームオーバー
じゃないですか。
花江 結
おー。楓君鋭いね。
先輩は俺を馬鹿にしているのだろうか...
花江 結
ま、いいや。
花江 結
22時間後にまた会おうね!
片岡 楓
はい。
片岡 楓
うっかり殺されないでくださいよ?
俺はそう言って、「にやり」と笑う。
花江 結
楓君もね。
先輩もそう言って、「にやり」と笑う。

それから、お互いに背を向けてその場を去った。



















人を殺す、か...



















ははっ。























人殺しになる時間も近いな。



















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サシビ
サシビ
『はーい、皆さーン。』
サシビ
サシビ
『22時間経ちましタ。』
サシビ
サシビ
『これから、誰が人狼か
グループで話し合ってくださイ。』



















放送が鳴り終わった。
町の人
どーする?
町の人
誰だろー。
町の人
分からない...
花江 結
私、分かります。
えっ⁉
町の人
だ、誰⁉
花江 結
それは...
どうしよう。ここで先輩が俺が人狼だと言えば
死...



















『人狼はいないと思う。』






















え...?
町の人
な、何で?
花江 結
だって、「人狼は必ずいる」
なんて言われてないでしょ?
確かに...
花江 結
それに、“人狼はいない”と
話し合いの結果を出せば、
誰も死なない。
花江 結
ね?説得力あるでしょ?
先輩はそう言って笑った。




















ははっ。



















先輩には参ったな。




















町の人
よし!それでいこう!
町の人
凄いな!そんなこと思い付くなんて。
本当、凄いや。
サシビ
サシビ
『さぁ、皆さン。』
サシビ
サシビ
『人狼は決まりましたカ?』
サシビ
サシビ
『それでは、人狼を処刑しまス。』


















『うわぁぁぁぁぁぁぁ!』


『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!』

















町の人の叫び声が一斉に響いた。



















けど、俺らのグループだけ聞こえない。


先輩の思惑が通じたわけだ。




















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花江 結
楓君、人狼だったでしょ?
先輩はそう言って、いたずらっぽく笑う。
片岡 楓
気付いてたんですか...
花江 結
まあね。
花江 結
でもどうせ、人、殺してない
んでしょ?
片岡 楓
先輩、エスパーですか?
俺は笑ってそう言った。
花江 結
エスパーじゃないけど、
エスパーになれそうだね。
先輩はそう言って笑う。
花江 結
どうやって人狼の仕事放棄したの?
仕事放棄って...
片岡 楓
ハエ叩いて殺して終わりです。
花江 結
ハエ?
片岡 楓
はい。
片岡 楓
だって、“人以外は駄目”なんて
言われてませんから。
俺はそう言って、「にやり」と笑う。
花江 結
ははっ。ずる賢いね。
片岡 楓
その言葉、そっくりそのまま
お返しします。
花江 結
お互いにずる賢いってことで。
先輩はそう言って笑った。





















後で思ってみれば、この時が一番平和だったの
かもしれない。



















この後、絶望を味わうなんて
知らなかったのだから。

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