私、人を殺したの...?
気付いたら、鬼が元の人の姿に戻っていた。
夢と、同じだった。
道の真ん中で、包丁を握っている私。
その包丁には血が付いていて
目の前には血を流した人が倒れている。
あれは、予知夢だったのかもしれない。
「ほら。言ったでしょ。」
「お前は人殺し。」
「もう、人間じゃないんだ。」
「お前は人殺し。」
「お前は、何の罪も無い人を殺したんだ。」
「ヒトゴロシ。」
脳内で、誰かが話しかけているような、
そんな感覚に襲われた。
私は、人殺しになってしまった。
もう、普通の人間にはなれない。
私は、手に握っていた包丁をするりと落とし
手を震わせた。
どうしよう。
震えが止まらない。
千歳はふらりと立ち上がりながらそう言って
私に笑いかけた。
千歳はそう言って、私をぎゅっと抱き締める。
その手は震えていた。
千歳は、鬼に腕を殴られてまだ、血を流している。
折れてるかもしれない。
なのに、震えているのに、痛いはずなのに、
私に笑いかけて、抱き締めた。
涙が溢れ出す。
別に、痛い所があるわけじゃない。
苦しいわけでもない。
ただ、不安なんだ。
ただ、悲しいんだ。
私はまだ、生きてて良いのか、不安で、
自分が、人殺しになってしまったことが悲しくて、
どうしようもなかったんだ。
え...?
過去は戻らない..未来は変えられる...
千歳はそう言って、私を抱き締めていた腕をほどき
笑った。
私は、その単純な言葉が、いつもより
何倍も、何倍も、輝かしく聞こえた。
過去は戻らないんだ。
けど、未来は変えられる。
私が人を殺したことに変わりはない。
けど、それを償うことならいくらだってできる。
人間はよく言う。
「死んで償う。」
それじゃ、いけないんだ。
それは、ただの救いにしかならない。
私は、ちゃんと償う。
だから、生き残る。
絶対に、このゲームをクリアしてみせる。
そして、
このデスゲームを終らせてやる。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!