『 オクタヴィネルの人魚さん♡/ちゃん♡ 』
※途中からあなたのリアル本名 下の名前ちゃんの敬語取れます
海の底にあるような雰囲気のオクタヴィネル寮は、今日も静かだった。
波の音も届かないほどの深さ。
そこに、私はいた。
アズール先輩が書斎で手帳を開いている。
中には、私の名前と心の記録。
けれど、その“名前”はもう、私のものではなかった。
アズール先輩の声が優しく響く。
――お父様。
その言葉が自然に口からこぼれる。
抵抗も、違和感もなかった。
もう、何が“正しい”のかもわからない。
そう返すと、彼は嬉しそうに頷いた。
ジェイド先輩がドアを開けて入ってきた。
静かな笑みを浮かべ、トレーを持ってくる。
ジェイド――お兄様の微笑みが深くなる。
手元のスープをスプーンですくって飲むと、身体がほんのり温かくなる。
それは“安定剤”のような魔法が溶け込んだ味だった。
お兄様が少しだけ考えてから、
優しく答える。
突然、明るい声が響く。
フロイド先輩..フロイドが背後から抱きついてきた。
海水のように冷たい手が、首元を撫でる。
その声が、笑っているのに泣きそうで。
私はただ、頷くことしかできなかった。
フロイドが満足そうに笑う。
その様子をお父様は静かに見つめていた。
お父様が私を見つめて微笑む。
お父様の手が私の髪を撫でる。
お兄様が隣で静かに微笑み、
フロイドが無邪気に笑う。
まるで本当の家族写真みたいに、
私たちは穏やかに並んでいた。
そのときだった。
ドアの向こうでノックの音がした。
明るい声。
この海の底には似合わない、太陽のような声。
お父様が眉をひそめる。
お兄様が扉を開ける。
そこには”カリム・アルアジーム”と、やや疲れた表情の”ジャミル・バイパー”が立っていた。
その声を聞いた瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
懐かしい――その言葉が、頭の奥でこだまする。
小さく名前を呼んだ瞬間、
お父様の手が私の肩に触れた。
お父様の声が静かに遮る。
カリム先輩が困ったように笑った。
ジャミル先輩がカリムの先輩の肩を掴み、低く囁く。
カリム先輩が驚いたように振り返る。
その瞬間、お父様の”魔法陣”が床に広がった。
空気が水のように重くなる。
カリム先輩の笑顔がわずかに消え、
ジャミル先輩の目が鋭く光った。
お父様の言葉に、お兄様とフロイドが微笑む。
その笑みは、美しく、そして恐ろしく歪んでいた。
カリム先輩が私を見つめ、静かに言った。
言葉の意味がわからない。
けれど、なぜか胸が痛くなった。
ジャミル先輩が小さくため息をつく。
2人が去った後、
部屋には再び静寂が戻った。
お兄様が肩に手を置く。
フロイドが微笑みながら抱きつく。
お父様が静かに頷く。
笑う声。
穏やかな空気。
でもその“優しさ”の中で、
心の奥のどこかが小さく叫んでいた。
――助けて。
けれど、その声は泡になって消えた。
愛されることに慣れた私は、自由を忘れて家族になった。
深海の家の中で、私は今日も微笑む。
その笑顔が“作られたもの”だと知られないように。
next~
🕌寮編 Episode4-1


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。