第2話

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2022/05/28 14:48
槇原 優羅
槇原 優羅
…はぁ……、
めっちゃ疲れた…。
っていうか、あの人が出掛けてから結構経ったけど全然帰ってこないし…。


途中で服脱いで捕まってたりしてないよな?


そんな想像をしだしたその時。
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
あ、いたいた。
男がビニール袋を掲げて帰ってきた。
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
はい、これ。
ポンっと男は袋を投げてくる。
槇原 優羅
槇原 優羅
……なんですか?これ。
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
ん?お茶とドーナツ。色々助かった。
ありがとな。
槇原 優羅
槇原 優羅
気にしなくて良かったのに。
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
やって貰ってばかりじゃ気がすまねぇの。
ジャージも、ちゃんと洗って返すから。
槇原 優羅
槇原 優羅
ッ…
意外としっかりしてんだな。
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
あ、もしかして今渡した方がいい?
俺、脱ごうか?なんて言いながら男はズボンに手をかける男。
槇原 優羅
槇原 優羅
いや…大丈夫です!
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
そ、ならいいや。
男はそう言うと、俺の隣に座り込んだ。


俺は口を開くと、ずっと聞きたかった事を男に問う。
槇原 優羅
槇原 優羅
…なんで裸で縛られてたんですか?
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
ははッ、なんでだと思う?
それが分からないから聞いてるんだけど…。
槇原 優羅
槇原 優羅
……………知らないです。
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
…ま、よくあることだよ。俺、Ωだし。
槇原 優羅
槇原 優羅
………は?
一気に体が強ばる感じがした。
今考えればすぐにわかる事だ。  


外で裸で縛られてるのも、それをまるで日常かのように語る姿も……βやαなら絶対にありえない行動だった。
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
昨日いきなり発情しちゃってさ。そこらのαの餌にされたってわけ。酷いよな。もう少し優しく扱えないのかね。
気分じゃなかったのになぁ〜、
なんて言いながら男は呑気に笑っている。


正直この人の気持ちなんてどうでもよかった。


俺は目の前にΩがいるという衝撃しか頭に無かった。
槇原 優羅
槇原 優羅
ッ、ぇ、と…俺ッ…
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
君、βだろ?
槇原 優羅
槇原 優羅
………………、
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
それもΩ嫌いの。
槇原 優羅
槇原 優羅
……!どうして分かったんですか…。
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
雰囲気でわかる。
っていうか君の場合は表情に出すぎ。
男はそう言うと壁に寄りかかる。
槇原 優羅
槇原 優羅
……そう、ですか……。
俺が俯きながらそう言うと、男は小さく笑って立ち上がった。
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
まぁ、それは貰っておいてよ。
捨てるなりしてもいいからさ。
槇原 優羅
槇原 優羅
……………。
碓氷 雪弥
碓氷 雪弥
また会おうな、槇原・・くん
男は軽々しい足取りで去っていってしまった。
槇原 優羅
槇原 優羅
…………ッ、
男が去った瞬間、体から力が抜けた。


また・・会おうな……?
もう二度とゴメンだ。Ωとなんて絶対関わりを持ちたくない。
ていうか、なんで俺の名前知ってるんだ?

俺、身分証明書でも落としたか…?
なんにせよ、ジャージを返してもらったらもう関わりを切ればいいだけの話だ。

あの人だって、
わざわざΩが苦手なやつに近づいてこないだろう。

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