第15話

ルイの気持ち
4,015
2021/10/17 09:00
アラン様の誕生日から3日。

思えば、お城での暮らしも早いもので数か月が経ち、仕事の合間に、「今日も頑張ってるね」なんて、お城の人達から声をかけてもらえるようになった。

最初は戸惑うことも多かったアラン様の世話役としての仕事も、自分なりのやり方を見つけ、初めの頃より余裕を持って取り組めるようにもなった。

それに、お城に来る前は、北部を離れることに寂しさと不安があったけれど、こうしてお城で生活しながらも大好きな北部との繋がりを大切にできている今、私は心からここでの生活が好きだって思える。
ソフィア
ソフィア
よし!今日も北部に行きますか
毎朝目覚めは良好だけど、北部に帰ると決めている日は、特に清々しい気持ちで目が覚める。

大好きな北部の空気を吸えるってのもあるけど、やっぱり一番は北部のみんなに会えるってことが大きい。

北部のみんなは、私の原動力なのかもしれない。
***
ソフィア
ソフィア
あれ、ルイ?
いつものように、お城の裏門へやって来た私は、突然の幼なじみの姿にきょとんと首を傾げた。
ルイ
ルイ
よ!ソフィア
ソフィア
ソフィア
おはよう!
どうしてルイが?
ルイ
ルイ
あぁ、さっき急に側近たちが
オリバーさんを尋ねて来て、
急遽会議になっちまったらしく、
ソフィアを北部まで送るよう頼まれた
ソフィア
ソフィア
……そうなの、
ありがとう、ルイ
ルイ
ルイ
おう!今日は休みもらってるから
俺も久しぶりの北部、満喫するつもり
ドロシーばぁちゃん元気にしてっかな〜
一瞬、側近の方たちと会議だと聞いて、先日のやり取りが脳裏をよぎった。

"アラン様の結婚"そんな文字を頭の中で浮かべては、必死に消そうと首を振る。
***

─── 数時間後。
ルイと2人で過ごす北部の時間はあっという間で、気づけばもうお昼。

昔はこうしてよく、ルイと一緒に木登りをして、危ないと近所のみんなに心配されたっけ。
北部の人々
あら!ソフィア!
ちょうどアップルパイを焼きたかったの
助かるわ、ありがとう
北部の人々
って、あら?ルイじゃない!!
ソフィアとルイが一緒なんて
なんだか昔を思い出すわね
ルイ
ルイ
どこ行ってもみんなその話!
俺が城に行ってから
まだそんな経ってないのに
北部の人々
それだけみんな、
ルイとソフィアを見れて
嬉しいってことよ。
今度ゆっくり2人で遊びに来てね
ソフィア
ソフィア
はい
いつものように北部のみんなに果物を届ければ、あちこちで私たちを懐かしむ声が聞こえた。

きっと、みんなの中の私とルイは小さい頃のままで、ルイが騎士として早くに北部を離れたこともあり、大人になった私たちが並んでいる光景が見慣れなかったんだろうな。
ルイ
ルイ
さーて、最後は
ドロシーばぁちゃん
本当の孫のように可愛がってくれたドロシーおばあちゃんのことが、私とルイは小さい頃から大好きだった。
ソフィア
ソフィア
ドロシーおばあちゃん!
ソフィアです
コンコン、と叩いても、全く開かないドア。
……留守?

もう一度強めに叩いてみても、やっぱりドロシーおばあちゃんは出てこない。
ルイ
ルイ
……おかしいな、
ちょっと開けてみるか
ソフィア
ソフィア
……え、
───ガチャ、

ルイによって、小さな音を立てて開くドア。
その先で、ベッドに横たわるドロシーおばあちゃんを見つけ、慌てて駆け寄る。
ソフィア
ソフィア
ドロシーおばあちゃん?
……具合悪いの?
ドロシー
ソフィア……
大丈夫、少し風邪を拗らせてね。
寝てれば治るから
ドロシー
それより、うつすと悪いから
ソフィアは早くお帰り
ゲホゲホと苦しそうに咳き込むドロシーおばあちゃんを置いて帰るなんて、私には絶対にできなくて。
ルイ
ルイ
ドロシーばぁちゃん、
飯は食ったか?薬も飲まないと
ドロシー
あら、ルイじゃない……
まぁまぁ大きくなったこと
ドロシー
せっかく2人で来てくれたのに
こんな体調で悪いねぇ
申し訳なさそうに顔を歪めるドロシーおばあちゃんは、寒気を感じるのかわずかに震えている。
ソフィア
ソフィア
ドロシーおばあちゃん、
風邪が治るまで私がそばにいるね
ドロシー
ソフィア……
気持ちは嬉しいけれど
お城のお仕事だってあるでしょ
ソフィア
ソフィア
今はドロシーおばあちゃんを
看病することの方が私にとって大事だもの。
……ね、ルイ。いいでしょ?
ルイ
ルイ
……あぁ。俺は昔から
そんな優しいソフィアが好きだよ
ソフィア
ソフィア
……えっ?
ルイ
ルイ
あ、いや……今のは!
ってここで誤魔化しても仕方ないか。
……俺、ソフィアが好き───
ルイの言葉を遮るように、ドアをドンドンと叩く音がする。
開けるとそこにいたのは、城からの知らせを伝える伝令だった。
ルイ
ルイ
悪い、ソフィア!
召集命令だ!俺は先に城へ戻る。
迎えは手配するから。
ドロシーばぁちゃんを頼んだ
ソフィア
ソフィア
分かった……!
気をつけて戻ってね
ドロシーおばあちゃんの手を握って、”早く治して”と告げたルイは、私の頭を軽く撫でると、ドロシーおばあちゃんの家を颯爽と出ていってしまった。

”俺、ソフィアが好き───”

私の心臓はまだ、ドキドキしている。

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