な、なるほど。なら、ここは慣れてない初対面のポケモンよりも手持ちのポケモンにしよう。そうしよう。
うちの子は皆性格がおおらかだから癒されるし。……一体見た目がちょっと怖い子居るけどちゃんと優しいし。
決して知らないポケモンと対話するのが怖いから手持ちのポケモンにしたわけじゃない。決して。
「さっそくジムテスト雪山すべりに挑戦するかい?」
「は、はい、お願いします…」
「白銀の世界をエンジョイしてね。それではスタートだ!」
え、今から?もう始まってる?と、とりあえずポケモン出さないとっ。えっと、ライド出来る子はこの子だから…。
腰の先頭についてあるモンスターボールを取り出して中にいるポケモンを出す。
「お願い、キュウコン」
ボクが出したのは女の子で色違いのキュウコン。ボクがまだ小さくキュウコンもロコンだった時からずっと一緒に居た初めてのポケモンだ。
よく寝る時一緒に寝ていてたまにしっぽが顔に来て窒息死しかけてるけど悪気がないから怒れない。寧ろ抱きついて寝てるぐらいだ。
「寒いのにごめんね。でも、ジムテストでポケモンに乗って受けないといけないらしくて…」
そこまで言うとキュウコンは四本ほどしっぽをボクの体を優しく包むように巻き付けてきた。
あ、これ凄く暖かい……。冷えてた体が温まる〜。キュウコンがいればもう何も怖くない!行けるぞ、これ。
そんな単純思考で少しキュウコンのしっぽをもふもふさしてもらいながらリラックスをする。
すると丁度体も程よく温まってきたところキュウコンはしっぽを退けて乗りやすいようにしゃがんでくれた。
「ぃよいしょっ。ありがとう、キュウコン」
そうして始まった雪山すべり。
「キュキュキュキュキュウコン、やっぱり辞めよう!?高いし、なんか吹雪降ってきたし、地味に風強い!!何より怖い!」
キュウコンにしがみながらそう言うとキュウコンは若干呆れた感じで歩き始めた。しっぽでボクが落ちないよう支えてくれながら。
やだ、キュウコンのそういうとこ好きよっ。じゃない!そういう優しさは大好きだけど違うの!辞めたいの!!
「ひっ、ムリムリムリムリムリムリム…ギャッ!!」
あっ、無理だ。死んだ。短い人生だったなぁ。
友達が欲しかったな、人生。じゃないよっ!
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!