重岡side
待ちに待っていた撮休。
朝早く起きてあなたの病院に行く準備。
車の鍵を持って玄関に出る。
昨日は突然の雨で気分も晴れなかったけど
そんなことが嘘のように
今日は朝から晴れだった。
久しぶりに走る病院までの道のり。
いつもならジャニーズWESTの曲を
携帯から流しているけれど
今日はラジオの気分で
ラジオを聞いていた。
久しぶりに病院の近くの駐車場に車を止めて
久しぶりに裏口から病院に入って
久しぶりに長い廊下を歩いて
久しぶりにこの扉を開けて……
久しぶりにあなたの名前を呼んで
久しぶりに中に入る。
でも変わっていたのは
ベットの上にいるはずのあなたが
今はいないってこと。
荷物を椅子において手がかりを探すと
直ぐに机の上に紙が置いてあって
“友達、面会、相談室、9:00〜”と
あなたの字で書かれた手紙を見つけた。
時計を確認すれば9時ジャストで
丁度面会中。
心配性の俺はすぐにあなたの心配をしてしまう。
いつの友達だろうか。
小学校?中学?
……男の友達かな?
そして俺は気になったら止まらない人間
だから俺は荷物を持って
「相談室」に行ってしまう。
相談室の場所をすれ違った看護師さんに
教えて貰って無事に着いた。
外からも聞こえてくる中の楽しそうな声。
なんだ、変な心配しなくても大丈夫そうやったな。
まぁでも何か具合が悪くなったらと
その場で思いついた理由を伝えれば
友達も中に入れてくれた。
奥に入れば車椅子に乗ったあなたがいて。
俺に気が付いたあなたは
水を1口飲んで息を整えていた。
友達の誘導により俺はあなたの隣に座った。
前よりも遥かに笑ったり
少し遅れながらもちゃんと話ができるように
なったあなた。
俺も横で静かに話を聞いていた時
1人の女子から話を振られた。
話に困ってしまったあなたが
ちらっと俺を見た。
少しだけ助け舟を出そうかと思い
人見知りな俺だけど勇気を持って声を出した。
言いながらあの時の楽しい思い出が
ふつふつと蘇ってくる。
でも今は
なんでか知らんけど
胸が少しだけ
本当に少しだけ痛んでる。
守れなかった、という後悔なのか……。
もしくは………
もしくは
もしくは………。
相談室の借りてた時間も近付いてきて
面会はあっという間に終わった。
見送りたいとあなたが言ったので
俺は車椅子を引いて正面玄関まで
一緒に行った。
名残惜しそうに友達が見えなくなるまで
手を振るあなたの姿。
さぁ、あなた。
俺のこの胸の痛さを教えて欲しい。
答え合わせをしよう。
間違っていたならそれはそれでいい。
ただ
この前の神ちゃんの言動もあるから
もしかしたらっていう俺の予想。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。