第22話

END14 か弱い猫と 闇夜の虎
43
2023/11/18 14:57
最近妙な感じがする
私の中に、もう1人誰かいるみたいな…
多重人格とかそういうのじゃない
ただ、ふと…
伊地知 虹夏
それでね…ぼっちちゃん
「今、思いっきり虹夏ちゃんを殴ったらどうなるんだろ」
後藤 ひとり
…え?
伊地知 虹夏
…え、どうしたの?ぼっちちゃん
後藤 ひとり
…あ、す、すいません
少し前に出た、右手を左手で元の位置に戻す
最近は…本当にこういうことが多くて困る
喜多 郁代
こんにちは〜
山田 リョウ
やっほ
後藤 ひとり
…こん…にちは…
私の中に、誰かいる
虎のようにじっくりと獲物わたしを狙ってる
何時でも、私を殺せる…虎みたいに…
妄想と現実のギャップにイライラする
どうせ叶わないなら、ずっと夢を見ていたい
喜多 郁代
ひとりちゃん?
後藤 ひとり
……あ、はいっ…す、すいませんなんですか?
喜多 郁代
……いやね、今日ずっとぼーってしてるから
後藤 ひとり
……
「余計なお世話なんだよ」
後藤 ひとり
……っ……い、いえ、なんでもないです
「今、喜多ちゃんを拒絶したらどうなるの?」
後藤 ひとり
……
山田 リョウ
ぼっち、大丈夫?
後藤 ひとり
……ほ、本当になんでもないですから!
「ビンタでもしてみたら?」
伊地知 虹夏
……
伊地知 虹夏
お、落ち着いて……ぼっちちゃん
私をなだめるためにちかずく
私は、虹夏ちゃんを突き飛ばす
伊地知 虹夏
いてっ……
ドシンと、尻もちを着く
山田 リョウ
……ぼっち
後藤 ひとり
……っ!すいません……
私は慌てて、虹夏ちゃんの腕を掴み起こす
後藤 ひとり
すいません……すいませんっ!
伊地知 虹夏
……い、いや、ビックリしただけだから……ね、大丈夫大丈夫
無理やり顔を引き攣らせて笑う虹夏ちゃん
後藤 ひとり
「偽善愛振りまくのやめませんか?」
……え?
私……何を……
伊地知 虹夏
……え?偽善……私そんなこと……してないよ
後藤 ひとり
「だって、嘘じゃないですか、どうせ私の事なんか下に見てるくせに」
喜多 郁代
ひとりちゃんっ!
山田 リョウ
ぼっち、いい加減にして
後藤 ひとり
「すいませんねwお2人もそうですよね……」
後藤 ひとり
「どうせ、ずっと3人でバンドしてればよかった〜、こんなクソ陰キャ要らなかったって、思ってるんですよね?」
喜多 郁代
何言ってるの?ひとりちゃん……
山田 リョウ
そんなこと思うはずないでしょ
後藤 ひとり
「どうせ。みんな、嘘つきですよ……あははっ!」
違うっ!私は……こんなこと……思ったことなんて……ない



私は……ずっと……みんなが好きで……みんなで夢を叶えたくて……
後藤 ひとり
嫌っ……いやだぁぁぁぁぁ!!!
私はスターリーを飛び出る
胃から込み上げてくる生暖かいものを抑えながら






私のせいだ……ずっと心のどこかで思ってたんだ……

最低だ私……
ヒーロー?そんなのになれるわけなかったじゃん……
これ、本心なのかな……私みんなのことそんなふうに思ってたのかな……
後藤 ひとり
……助けてよ……
「ずっと、ひとりぼっちなんだからね」
「取り柄なんてなんにもないよ」
「ギターだって、お前より上手いヤツなんて五万といる」
後藤 ひとり
そうだよ……私は……ずっと……縮こまってる……
「お前を求めるやつなんて居ない」
「伊地知虹夏も、喜多郁代も、山田リョウも、誰もお前なんかに期待してない」
「誰もお前を愛してなんかない」








後藤ひとりは、いらない子









生まれてきてもダメだった、いらない子











ずっと、気分がいいだけの妄想に騙されてただけの、いらない子
    







手だって……顔だって……体だって……心臓だって……





全部全部……汚くて……要らなくて……






それなら、私生きてる必要なんてないじゃん






虎になんてならなくていい、猫のまま、夢を見たまま死にたい








後藤 ひとり
ずっとひとり……ひとりぼっちの…ギターヒーロー



私は自分の首に手をかけた

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