俺様は痛みに呻きながらも、アラスターの深紅の姿をにらんだ。
アラスターの角がゆっくりと肥大化し、
瞳が赤いラジオ針になった。
言ってスティングは、俺様を片手で掴み上げ、もう片方の手で俺様の頭に銃口を突きつけた。
さっき俺様が放り捨てた《天使の武器》だ。
次の瞬間……死角から振り下ろされた触手が、ギロチンのようにスティングの両腕を切り落とした。
地面に放り出され、無様に倒れる俺様に、アラスターが手を差しのべた。
その手をよく見ると、淡く緑色に光っている……。
俺様は咄嗟にアラスターを突き飛ばした。
スティングの能力なんだろう。
切り落とされた腕の断面が、まるで槍のように鋭く尖り、こちらに向かって伸びてくるのが見えたんだ。
アラスターの胸を貫くはずだったその攻撃は。
俺様の胴体を貫き……穴を空けた………。
次の瞬間。無数の触手が、スティングを文字通り握り潰した。
アラスターが俺様を抱き上げ、顔をしかめた。
俺様の体には、「穴」が空いていたのだ。
口から血を吐きながら、俺様は笑った。
心に穴が空いた上に、今度は物理的に体に穴が空くとは……何の冗談だ。
だが、俺様は清々しい気分だった。
アラスターが真面目腐って言った。
俺様は笑って言ってやった。
戦場の土の下に
戦死者の墓に
口から溢れた血の味に
逃げ場などなく
うなだれたまま
失い過ぎて
繋がれた手にーーー
もう溺れたんだ
アラスターが、《天使の武器》であるリボルバー拳銃を拾い上げた。
「ギチッ」とラジオ機材のような音をたて、アラスターの口が笑みに裂けた。
チャキ!
アラスターは、リボルバーのシリンダーを回転させると、自分自身の頭に銃口を突き付けた。
バン!
バン!
バン!
ああ……! こいつは狂っている!
わかっていたことじゃねえか!!!
緑色に光る奴の右手を、俺様はヤケクソで握り返した。
ああ! その笑顔がムカつく!!!
こうして俺様はーーー。
アラスターと《契約》した。
俺様の長い話を、あなたはニコニコと聞いていた。
ああ、天使のようだった妹分が、小悪魔に……これもあいつと結婚した影響か……。
ようやくアラスターが姿を現し、カウンターに着くと、あなたを膝の上に抱えてイチャつき始めた。
新婚夫婦の邪魔をするほど野暮ではない。
ましてや、あれだけ運命に引き裂かれた二人が、ようやく結ばれて幸せになったのだ。
口には出さないが、俺様は心からこの結果に満足していた。
あなたのウエディングドレス姿を見て、こっそり涙ぐんだほどだ。
この二人の幸せな結末を見届けられただけでも……
俺様の苦悩に溺れた人生に、
地獄堕ちに、
アラスターとの《契約》に、
意味はあったのだろうか。
振り向くと、そこにアラスターとあなたの笑顔があった。
まだ人間として生きていた時、《ヘヴンズホテル》で過ごしたあの日々と変わらずに。
俺様は取って置きのボトルを解禁する。
ああ、今夜も俺様はーーーー。
この地獄に酔いしれる。
完













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。