目黒side
阿部ちゃんと交代でお風呂に入った。
先に入ってた阿部ちゃんはもう髪の毛も乾かし終えて、ソファでまったりしている。
だけど面倒くさがりな阿部ちゃんの髪の毛は、まだ少しだけ湿っている。
頭を少し撫でたあと、そのまま頬に触れた。
1度俺を上目遣いで見てから、擦り寄るように受け入れてくれる。
可愛い。
阿部ちゃんの横に座るように促されたから、言われるままに腰を下ろした。
そしたら満足そうに笑いながら、
とのこと。
よくわからなかったけど、
阿部ちゃんに背を向ける感じで座った。
すると背中が温かくなって、阿部ちゃんが抱きついてきてくれてることを察する。
お腹まで回ってきた手に俺の手を重ねると、
するりと指を絡ませられた。
阿部ちゃんは俺の所有物だって思ったことは1度もない。
むしろ一生手に入らなそうで、手に入れたくなくて。
そもそも、人を物に例えたくない。
でも俺は、阿部ちゃんのものだ。
俺の全部、阿部ちゃんのもの。
頭の中に?が数個浮かんだけど、
阿部ちゃんがすぐに俺の服をめくり出したから、
あーそのまんまねって理解する。
捲られて、なにされるんだと身構えたけど、
しばらくはなにもされなかった。
ただただ、視線が刺さる。
背中の真ん中を、指で下からなぞられた。
ぞわぞわーってなるから、あんまり得意じゃない。
その俺の反応がお気に召したのか、阿部ちゃんはクスクス笑いながら何度かそれを繰り返した。
阿部ちゃんに弱みを握られた気分。
悔しい。
先日発売された表紙飾らせてもらった雑誌。
けっこう背中ばっくり割れてる衣装着てて、
すごいなあって思ったっけ。
阿部ちゃんの口から、
なにもしてないこの状況で、
"えっち"なんて単語が聞けるなんて思わなかった。
本当は今すぐ振り返って阿部ちゃんの顔が見たいんだけど、まだ服を戻して貰えてないから、まだダメなんだろう。
俺の脇腹近くに2連であるほくろ。
そこをピンポイントでぐりぐり指で押されている気がする。
なんて可愛いことを言ってくれるんだ。
ちょっと拗ねた口調で。
可愛すぎる。
可愛すぎて言葉が出なくて黙り込んでると、
阿部ちゃんの柔らかい唇が、俺のほくろに触れた。
ちゅっ…と弱く吸って、舐めて。
ねぇ阿部ちゃん…、誘ってる、?
自分の際どいところにほくろがあることを、俺は知っている。
意地悪な質問をした。
だってつまりそれは、
全裸の俺をくまなく見てみる?ってことだから。
だけど阿部ちゃんは、こくりと頷いて、立ち上がった。
顔を赤くしながらも、口では大胆な発言をかます小悪魔阿部ちゃん。
今日はかなり拗ねて、かなり嫉妬したらしい。
可愛い。可愛いよね。
異論は認めないよ。
𝑒𝑛𝑑
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。