# side - 睦季
みんなと心が通った翌日。
伸びをしてペンを置く晴燈は、にいっと笑った。
4限目が終わった昼休み。腹を空かせた2人を連れて、菫と共に廊下に出る。
4組の方向から、嬉しそうに駆けてくる2つの影。
凛都の一言に足を踏み出す。
白昼の中庭は輝き、後光が差すみんなに眩む。
明るい空の下、俺が〝 友達 〟と集える日が来るなんて。
みんな次々日陰に座り、俺も日陰に腰掛ける。
木漏れ日が眩しくて、それがまた幸せで。
こんな気持ちになれたのは、いつぶりだろう。
零哉の一言目を合図にいただきますと輪唱し、談笑しながら飯を口に運ぶ。
口を開くと、みんなは箸を止める。
ぽつり呟くと、なんとも嬉しそうに笑うみんな。
何気なく口にした言葉。
だけど、言い終わったあとに小っ恥ずかしくなり、口を噤む。
ハンバーグを半分に割って俺の弁当箱に入れると、嬉しそうにたこさんウインナーを口に運ぶ。
晴燈、本当に自分に素直で、見てて優しい気持ちになる。
もきゅもきゅたこさんウインナーを頬張る晴燈から、ぐるっとみんなを見回す。
お世辞にもいい態度とは言えなかった俺。
避けて、心無い言葉を吐いて、それでもみんなが愛想を尽かさないでいてくれたのが疑問だった。
「 俺、みんなに何もしてない。」と言おうとすると、奏響が口に人差し指を当てる。
にまにまとこっちを見る3人。
長時間話していたことに、日陰の傾きで気が付く。
もう昼休みも半ばか、と思っていると、遠くから話し声が聞こえた。
大きくて、頭に響く声。
……俺は、この声の主を知っている。
菫がそう言った時。
ちょうど俺の目の前に、2つの人影が。
嫌に口角が上がる2人を、睨みつけた。
動悸が止まらない。震えも止まらない。
思い切り箸を握る。
俺のために怒ってくれる奏響の前に手を出し、震える脚で立ち上がる。
もう逃げない。
みんなに、教えてもらったんだ。
みんなが教えてくれたんだ。
俺には、みんながいる。
みんなの心配の視線を感じる。
その優しさが、俺を立ち上がらせてくれたんだよ。
初めて声を張った。
初めて、胸を張った。
気味悪がって2人が背中を向けたのを見て、体の全ての力が抜けた。
倒れ込んだまま、嘔吐きが止まらない。
……でも、言ったんだ。言えたんだ。
嘔吐きでなにも返せない。
みんなの心配に、気遣いに、ありがとうって言いたいのに。
零哉の手をなんとか掴むと、奏響が腕の下に肩を入れて立ち上がる。
謝りたくて、お礼を言いたくて、口を開く。
みんなのあたたかさが沁みて、涙が滲む。
よくみるとみんなも、涙目で。
……なんでそんなことができるんだよ、お前らは。
お前らこそ、並大抵の人間にはできないこと、してるよ。
できる限り笑って、声を絞る。
みんなも涙目で笑って、頷いてくれた。
保健室につき、事情を説明して横になった時。
奏響はぽつりとそう言った。
それを聞いて、晴燈が聞く。
……そういえば。ニックネームがあるのは、俺だけだ。
みんながうんうん頷くと、零哉は突然スマホをいじり出した。
ニックネーム、という響きが、なんだか擽ったかった。
戻ろうと思い少し体を動かすと、晴燈が言う。
勿論図星で、まだ心の砂嵐はおさまっていないし、ほんの少しの刺激でまた体調を崩す予感がする。
それを最後に出ていこうとするみんなの背に、一言言いたかった。
伝えたい言葉があった。


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!