# side - 睦季
昼休み。
かんかんと軽快な6つの足音が、冷え冷えとした階段にこだます。
大きな扉に体重をかけ、外の風を全身で浴びる。
躊躇なくどーんと床に据え、みんなに座って座ってとジェスチャーする晴燈。
それに従い、全員がその場に座った。
いつも通り、わちゃわちゃ賑やかにご飯を食べる。
晴燈がボケて、零哉と奏響がツッコんで、
的外れな発言をする菫、それにツボりいじる凛都。
この空気が好きだ。心地良くて、安心感があって。
みんなとの会話に参加しながら、何を言おうかと思考を巡らせる。
俺がここにみんなを呼んだのは、言いたいことがあるからだ。
言いたいことを、言うためだ。
そんな俺の顔を覗き込み、零哉が言った。
急に図星を突かれ、声が漏れる。
俺は、感情を抑えられるタイプではない。それが周知の事実とされているのを認識し、なんとなく怖くなった。
……でも、今日ばかりは、臆病な俺を許してやっちゃいけないんだ。
俺は今日伝える。何があっても。
そう決めたんだ。俺は誰も裏切れない。みんなも自分も。
男に二言は無い。
そうやってまた沈む中、2人の言い合いが耳に飛び込んだ。
反射的に顔を上げると、晴燈は口をいっぱいにして笑っている。
本当に幸せそうで、憎めない。
悔しそうに引き攣る零哉の肩にぽんと手を置いて、奏響が一言。
励ますのかと思ったら堕としにきた奏響と素直な零哉は、なんだか面白いというか、微笑ましいというか。
……悔しそうだけど。
急に俺にきて動揺し、つい冷たく言い放ってしまった。
だけど、2人とも怒らない。
……チャンス。
俺に来てくれた今。俺は、俺は、俺の話を。
甘えてごめん。みんな。
勇気をだして言うと、思ったよりも大きな声が出る。
……でも、怯むな。大丈夫。
俺ならできる。みんなに俺の話を、したい。
みんなは優しく頷く。
きっと、みんなならわかってる。
俺が何かを、話そうとしてること。
言葉が上手く紡げない。
ああ俺、絶対今変なこと言ってる。
つーんと熱くなる鼻奥。
みんなのあたたかい優しさに触れ、喉に張り付いた氷が溶けた気がした。
また話そうと、息を吸い込む。
ガタンッ!
勢いよく屋上の扉が開いた音がした。
びくっと跳ねる肩。
なぜだか嫌な予感がする。
奏響と零哉は、さり気なく俺に近づいてくれた。
優しさに涙が出そうになる。
全身が硬直し、箸が落ちる。
声をかけてくれる2人。
身体が震えているのを感じる。
菫も俺の方を向き、優しく俺に問いかける。
俺は、小刻みに顔を横に振った。
なんで、なんでお前らがここに。
言うだけ言って、こそこそ話し、屋上を後にした2人組。
全身の血液が心臓に集まり、末端が冷えていく感覚。
みんなの俺を見る目。
荷物を全部置いたまま、震える脚を奮い立たせて駆け出した。
背中にぶつかるみんなの声も、聞こえないフリをした。
怖かった。俺に向けられる言葉の数々が。
がむしゃらに家に向かった。
血と涙でぐしゃぐしゃになった。
俺は、弱い。

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。