夕暮れ時の帰り道。
ひとりの高校生が、歩道を走る。
「はぁっ、はぁっ、」
もう、何も聞こえない。
頭に入っている情報は、彼女、紗雪さんのこと。
そして、俺が向かっている目的地のこと。
『紗雪さんが、‥亡くなりました、』
先生から、突如告げられた凶報。
俺は、その場にじっと居られず学校を飛び出してしまった。
呼び声に気づかず、ただひたすら走った。
授業中に飛び出すのはダメ?
そんなこととっくに知ってる。
知ってるけど、、
今、紗雪さんに会わないと一生会えない気がする。
だから‥‥、________。
「紗雪さんッ、」
勢いよく紗雪さんの病室へ足を踏み入れる。
‥と、女性の看護師が椅子に腰を掛けていた。
「‥君が、赤葦京治くん?」
「え、なんで名前、?」
「あなたちゃんから話はよーく聞いてたのよ。」
紗雪さんと一緒に居たってことだろう。
「ま、本命はあなたに預かり物を渡すためにここにいるのよ。」
泣きそうに笑いながら、俺にひとつのノートを寄越す。
題名も、名前も書いてない。
少しクシャッとなっているノートだ。
「預かってたって‥紗雪さんからですか、」
「ええ。彼女が、あなたに渡して欲しいって。」
‥俺にこれを渡すためにここに居たのか?
つまり、俺が来なかったら、、
「あなたが来なかったら、あなたはそれまでだった。‥でも、来た。」
「赤葦京治くん、あなた相当あなたちゃんに惚れてるのね。」
「ッなっ、//」
「‥そのノート、日記だって。読んであげなさい。私はもう行く。」
‥日記、か。
少し気になって、ベッドで寝ている紗雪さんを少し見つめる。
起きないであろう彼女。
傍で、彼女の頬を撫でる。
頬には泣いた跡があって、体温は‥感じることができなかった。
もっと一緒にいたかったなぁ、って。
想いを、伝えたかったなぁ、って。
「‥俺、意外と重いのかもしれないなぁ、」
苦笑いを顔に浮かべ、手元にあるノートを数秒見つめる。
ふと、脳裏をよぎる多くの疑問。
時折見せる彼女の儚げな、あの表情はなんなのか。
叶えることのできなかった、今日の願いはなんだったのか。
彼女‥紗雪さんは、どんな気持ちで俺の横に立っていたのか。
何か、俺に隠されていたことが分かるかもしれない。
彼女のことを知ることができるかもしれない。
そんな軽い気持ちで、ノートの表紙をめくる。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!