「こんにちは!赤葦さん!」
昼休み。
毎日のように花に水をやっていると、紗雪さんが俺の横に来た。
心なしか、いつもよりテンションが高い気がする。
「‥紗雪さん、こんにちは。何かいいことありましたか?」
「んー、むしろその逆ですね‥、」
「‥え、」
「なーんて!嘘ですよ!」
「‥‥そうですか、」
そう、嘘だろう。
テンションは高いし、いつもよりにこにこと笑っている気がする。
‥けど、彼女が嘘だと言った時の、その儚げな笑顔が、
今にも泣きそうな声色が、
何か、突っかかるんだ。
「今日のお願い!赤葦さんの部活見に行っていいですか⁈」
「え、いいですけど‥紗雪さんの部活は、?」
「部長に言えば許可は出ると思います!と、言うことでまた放課後!」
「あ、はい、」
何か慌てているような、少し早口な言葉。
もう少しだけ話していたかったが、また放課後に会える。
その事実だけで、心が暖まる気がする。
「木兎さん!!」
「へいへいへーい!!」
いつも通りの部活。
いつもと違うところと言えば、紗雪さんが観戦していることくらい。
‥だからかは、知らない。
けど、いつもより調子がいい気がする。
いつもより、周りが見える。
トスを上げる瞬間、時間がゆっくりと流れている気がする。
「一旦休憩!!」
休憩中、たまに見える紗雪さん。
どうやら、絵を描いているようだ。
今日は何を描いているのだろう。
じっと彼女を見つめていると、こちらに気がついたようだ。
俺に向かって小さく手を振った。
遠い距離からでも、紗雪さんがふわりと笑っているのが分かる。
‥俺が彼女の行動に、いちいち愛おしく感じてしまう理由も分かっている。
‥‥でも、認めてしまいたくなかったんだ。
だって、きっと俺の好意は届かない。
「______好きだ。」
心の中にある、小さくて大きいその言葉。
口に出しても遠くにいる彼女には届かないんだ。
その事実は、まるで俺の言葉は彼女には届かない、と証明されているよう。
「赤葦さん!凄かったです!こう、何というか‥バシッ!バンッ!って、!」
「語彙力がなんか凄いことになってますよ。」
「ふふ、」
紗雪さんは、ひとりで家まで帰るらしい。
せっかくだが、急ぎだと仕方がないので校門まで送ることにした。
「紗雪さん、俺のマフラー使ってください。寒いでしょう?」
小刻みに震えている紗雪さんに、俺は自分の黒いマフラーを渡した。
すると、「いいんですか!」と聞いてきたため、頷いた。
俺のマフラーをつけた紗雪さんは、遠くを見て笑っていた。
どこか名残惜しそうに、儚く散っていく花のように。
「あの、!!」
「え、あ、はい、?」
「目、瞑って5秒止まっててください!」
バッ、と彼女はこちらに勢いよく振り返る。
紗雪さんの口から出た言葉は、謎なもの。
「?分かりました、」
1‥
2‥
3‥
4‥
5‥
『チュッ』
「ッは、」
どこからかの音に驚き、瞬時に目を開けてしまう。
目の前には、頬を赤らめた紗雪さんの顔。
今、何を‥、
「あ、えと、また明日、!」
彼女は言葉を残して、俺の目の前から消えていった。
と、同時に色々な気持ちが頭の中に浮かんでは消える。
どうして、キス‥、
キスされたという事実に、どんどんと顔に熱が集まって、後ろめたい期待を持ってしまう。
‥紗雪さんは、俺のこと、どう想ってるんだろ。
____あ、えと、また明日、!____
不意に、紗雪さんの言葉が頭に浮かぶ。
そうだ、明日。
明日、俺はキスのことについて彼女に問おう。
あわよくば、俺の好意も、紗雪さんに伝えよう。
紗雪さんの印象 六日目。
『‥___________ ________。』












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。