車内は、がらんとしていた。
夏休みの夜にこの電車を選ぶ人なんて、ほとんどいない。
窓ガラスに、ボクと未來の姿だけが並んで映っていた。
未來は軽く笑う。
でも、その声はどこか、無理をしてるように聞こえた。
ボクは少し目を伏せる。
――本当は、ひとりで消えたかった。
君がいるなら、消えるのが、もっと怖いじゃないか。
未來に言うのも怖いから、こうして「旅」って言い訳をしている。
もう一度、未來は微笑む。
その笑みに、その言葉に、胸がざわつく。
未來は、ボクのことを分かってくれる。
でも未來がボクをどう思ってるかは正確には分からない。
ただの友情か?それとも――。
ボクがそう考え事をしていると、電車がカタン、と揺れた。
未來はバランスを崩して、ボクの肩にもたれる。
その距離が、少し苦しかった。
ほんの一瞬、触れ合っただけで胸が痛む。
未來への、言えない想いを抱えているから。
外の広がる闇の中に、港町の灯りが小さく瞬いていた。
その瞳が珍しく揺れているのを見て、ボクは笑った。
心の奥では「また今度」と繰り返しながら――。
二人を乗せた夜汽車は、ただひたすらに、暗闇の中を走り続けた。
To be continued……












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!