第2話

【第一章】夜汽車の窓に映る影。
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2025/10/01 22:32 更新
車内は、がらんとしていた。
夏休みの夜にこの電車を選ぶ人なんて、ほとんどいない。
窓ガラスに、ボクと未來の姿だけが並んで映っていた。
来栖 咲季
「……ほんとに、着いてくるんだね」
七瀬 未來
「当たり前でしょ。きみひとりじゃ、危なっかしいから」
未來は軽く笑う。
でも、その声はどこか、無理をしてるように聞こえた。
ボクは少し目を伏せる。
――本当は、ひとりで消えたかった。
君がいるなら、消えるのが、もっと怖いじゃないか。
未來に言うのも怖いから、こうして「旅」って言い訳をしている。
来栖 咲季
「……ボクなんかと一緒に居て、楽しいの、?」
七瀬 未來
「咲季だから、着いてきたの。」
七瀬 未來
「返答になっているかは分からないけど。」
もう一度、未來は微笑む。
その笑みに、その言葉に、胸がざわつく。
未來は、ボクのことを分かってくれる。
でも未來がボクをどう思ってるかは正確には分からない。
ただの友情か?それとも――。
ボクがそう考え事をしていると、電車がカタン、と揺れた。
未來はバランスを崩して、ボクの肩にもたれる。
七瀬 未來
「……あ、ごめん、考え事してたよね?」
来栖 咲季
「いや、大したことじゃないから。」
七瀬 未來
「そう、ならよかった、」
その距離が、少し苦しかった。
ほんの一瞬、触れ合っただけで胸が痛む。
未來への、言えない想いを抱えているから。
外の広がる闇の中に、港町の灯りが小さく瞬いていた。
七瀬 未來
「……咲季」
来栖 咲季
「ん?どうしたの?」
七瀬 未來
「…この間だけでいい、から……わたしと、一緒にいて、」
その瞳が珍しく揺れているのを見て、ボクは笑った。
来栖 咲季
「うん。ボクも、未來と一緒にいたい」
心の奥では「また今度」と繰り返しながら――。
二人を乗せた夜汽車は、ただひたすらに、暗闇の中を走り続けた。
To be continued……

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