第6話「声にならない想い」
会議室のモニターに、鮮やかな映像が映し出された。
全国ツアー決定の文字と、ファンの歓声を切り取った映像。
息をのむあなたの横で、メンバーたちが次々と声を上げる。
ヨシが隣で柔らかく笑いかける。
あなたはぎこちなくも笑顔を返した。
その横で、ハルトは口元だけで小さく笑いながら視線を逸らす。
――その日から、あなたの中で“もっと頑張らなきゃ”が強く根を張っていった。
朝は早く起きて軽く走り、決められたメニューだけを口にする。
昼はひたすらダンス練習、夜は深夜まで自主練習。
控室では、メンバーたちが小さな声で囁く。
その心配を知ってか知らずか、あなたはただ黙々と練習を続けていた。
その日も練習室には重い空気が漂っていた。
リズムに合わせたステップ。あなたの動きがわずかに遅れる。
曲が止まり、ジフンの低い声が響いた。
ジフンの目が険しくなる。
その言葉に、あなたの動きが止まった。
あなたが言い返したのは初めてで、皆は驚きを隠せなかった。
声が震え、涙が滲む。
叫ぶようにそう言い残し、足音を響かせて練習室を飛び出していく。
閉じられたドアの向こう、重い沈黙が落ちた。
沈黙を破ったのはヨシだった。
低い声で、しかしはっきりと言う。
アサヒも静かに頷く。
ハルトが短くため息を吐きながら、壁に背を預けた。
その言葉に、ジフンは視線を落とした。
手のひらで汗を乱暴に拭いながら、小さく舌打ちする。
彼の声は震えていた。怒りではなく、後悔の色で。
冷たい夜風が肌を刺す。
足が止まるまで、どれくらい走ったのかもわからなかった。
息が上がり、肩で大きく呼吸しながら私は階段に腰を下ろした。
練習室は地下にあるんだけど、2階と3階の間の階段は誰も来ない。
頭の中で、ジフンの声が何度も反芻される。
その“女の子”という言葉が、胸の奥を何度も締めつけた。
視界が滲む。
悔し涙が頬を伝い落ちるけれど、拭うことさえできなかった。
本当は、ジフンが私のことを心配して言ってくれたのも分かってる。
無理してるのを見抜かれてたのも、誰よりも近くで見てくれてたのも知ってる。
それでも――あの言葉は、あまりにも悔しすぎた。
“守られる存在”じゃなく、同じ“メンバー”として認められたかっただけなのに。
なんで。
どうして。
ちゃんとみんなの“メンバー”になりたかっただけなのに。
頑張って、頑張って、やっとここまで来たのに。
それでも私は、“女だから”って線を引かれるんだ。
唇を噛み締め、うつむいたまま震える指先をぎゅっと握る。
その時、背後から低い声がした。
振り返ると、息を切らせたハルトが立っていた。
ハルトは無言のまま近づき、冷たいペットボトルを差し出した。
あなたは一瞬、視線を逸らしたまま受け取る。
キャップを開ける手が震えているのを、ハルトは黙って見つめた。
その一言で、あなたの目からまた涙が溢れた。
堪えても堪えても、止められない。
ハルトの言葉に思わず笑いそうになる。
そう言いながら、ハルトはあなたの頭に大きな手を置く。
やさしく、ゆっくり、髪を撫でた。
その声は低く、静かで、それでいて真っ直ぐだった。
あなたはただ、声を出さずに頷くことしかできなかった。
その隣で、ハルトは何も言わず、しばらく同じ夜風を感じながら隣に座り続けていた。
※更新遅くなりました( ; ; )
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝



















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。