第17話

6/10②
13
2020/04/05 13:43
丸山丈
丸山丈
違う…。だって…そんなはずは…。
ここに書いてある内容は、間違いなく"If story"だ。
それこそ5話以降は気味が悪くなって読んでいなかったあの小説そのものであって…。
丸山丈
丸山丈
8話…8話を見なきゃ…。
"気味が悪い"という一時の感情で消え去っていたあの衝動が、再びよみがえった。

俺はこの小説を読まなければならない。
臭い言葉を使えば…

俺にはこの小説を読む義務がある…!
荒木澄香
荒木澄香
ここにいたのね…。
澄香が俺がいる教室にやってきた。
空気が一気に気まずくなってしまう。
丸山丈
丸山丈
澄香…。
荒木澄香
荒木澄香
なんで逃げるの?
私が怖いから?
丸山丈
丸山丈
いやそういう訳じゃ…
荒木澄香
荒木澄香
…まあいいわ。
丸山丈
丸山丈
ごめん澄香!
荒木澄香
荒木澄香
何がよ。
丸山丈
丸山丈
その…嘘だったんだよ…!
アレ…。
荒木澄香
荒木澄香
え?
丸山丈
丸山丈
寝不足って言って早退した時あったろ?
あれ…嘘なんだよ。
荒木澄香
荒木澄香
…そうなのね。
まあ、だいたいそんなことだろうと思ったわ。
丸山丈
丸山丈
え?
荒木澄香
荒木澄香
その事ならもういいわ。
ただ今後はサボったら…
丸山丈
丸山丈
分かった分かった!
努力するよ…。
俺は澄香に今更ながら謝罪をした。

澄香が泣いていたことを俺が知っているということ…は悟られなかったか。

…てか、今はそれどころじゃねえ!
丸山丈
丸山丈
とりあえずこれ…読まなきゃ!
荒木澄香
荒木澄香
は?あんたのなんでしょ?
帰ってからゆっくり読めば…
丸山丈
丸山丈
そんなこと言ってる時間ないんだよ!!!
怒鳴ってしまった。
いつもは俺が怒鳴ったら怒鳴り返すような澄香でさえ今日は怒鳴り返すことも無くただ黙り込んでいた。

俺はルーズリーフの次のページをめくり…

ん?
丸山丈
丸山丈
変だ…。
荒木澄香
荒木澄香
何が変なのよ…。
丸山丈
丸山丈
8話が…8話がないんだよ…!
丸山丈
丸山丈
どこだ?
どこにあるんだよ8話はよお!
丸山丈
丸山丈
そうだ…。
あっちでなら読めるかも…。
俺は咄嗟にスマホを取りだしあのサイト、"Heavennovel"にアクセスを試みる。

…しかし出来ない。

肝心の時に限ってサイトは動いてはくれない。

まあ1週間以上忌避しといてこんな事言うのもあれだが、"Heavennovel"がないと困る状況でサイトが開いてくれなかったのは今回が初めてだ。
荒木澄香
荒木澄香
さっきからどうしたのよ…。
ちょっとおかしいわよ丈…。
丸山丈
丸山丈
ああ、違うんだ澄香、これにはちゃんと訳があって…。
俺は澄香にことの経緯いきさつを説明した。

突如俺の前にあのサイトが現れたこと…俺がそのサイトの中のある小説を衝動的に読んでしまったこと…俺が今手にしているルーズリーフにはその小説と同じ内容が書かれていること…

自分が覚えている限り、余すことなく全て語った。
荒木澄香
荒木澄香
じゃあ…丈はこの小説を既に知ってたってこと?
丸山丈
丸山丈
ああ。
だからこうして"If story"が俺の前に現れてることに俺は驚いてる。
荒木澄香
荒木澄香
丈、なんだか気味悪いよ?
このルーズリーフさ…。
丸山丈
丸山丈
俺も最初はそう思ったけど、それは違うと思う澄香。
荒木澄香
荒木澄香
なんでそう言いきれるのよ!
丸山丈
丸山丈
分からない…けど!
俺を信じてくれよ…。
俺は必死に澄香を説得した。
澄香を上手いこと説得できる根拠も証拠もないし、肝心のあのサイトにアクセスが出来ないので現物を見せることも出来ない。
でも何度も言い聞かせた。
分かってくれるかどうか、不安ではあったけど…。
荒木澄香
荒木澄香
まああんたがそこまで言うんなら、そういう事なんでしょうね…。
丸山丈
丸山丈
分かってくれるのか?
荒木澄香
荒木澄香
これで嘘ならあんた相当な役者よ。
そんな芸当が丈に出来るとは思えないわ。
そういうことかよ…。
一言一言が憎たらしいなこいつは。
まあでも、わかってくれただけ良しとするか。
丸山丈
丸山丈
じゃあ俺、帰るから。
ああこれ、預かっとくな。
荒木澄香
荒木澄香
待って!
丸山丈
丸山丈
どうした?
荒木澄香
荒木澄香
ううん、なんでもない。
次の部活には来る事ね。
丸山丈
丸山丈
分かってるって。じゃあな。
俺はルーズリーフを持って澄香に別れを告げ、教室を出ていった。
荒木澄香
荒木澄香
荒木澄香
荒木澄香
私がしたこと、全部無駄じゃん。

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