ここに書いてある内容は、間違いなく"If story"だ。
それこそ5話以降は気味が悪くなって読んでいなかったあの小説そのものであって…。
"気味が悪い"という一時の感情で消え去っていたあの衝動が、再びよみがえった。
俺はこの小説を読まなければならない。
臭い言葉を使えば…
俺にはこの小説を読む義務がある…!
澄香が俺がいる教室にやってきた。
空気が一気に気まずくなってしまう。
俺は澄香に今更ながら謝罪をした。
澄香が泣いていたことを俺が知っているということ…は悟られなかったか。
…てか、今はそれどころじゃねえ!
怒鳴ってしまった。
いつもは俺が怒鳴ったら怒鳴り返すような澄香でさえ今日は怒鳴り返すことも無くただ黙り込んでいた。
俺はルーズリーフの次のページをめくり…
ん?
俺は咄嗟にスマホを取りだしあのサイト、"Heavennovel"にアクセスを試みる。
…しかし出来ない。
肝心の時に限ってサイトは動いてはくれない。
まあ1週間以上忌避しといてこんな事言うのもあれだが、"Heavennovel"がないと困る状況でサイトが開いてくれなかったのは今回が初めてだ。
俺は澄香にことの経緯を説明した。
突如俺の前にあのサイトが現れたこと…俺がそのサイトの中のある小説を衝動的に読んでしまったこと…俺が今手にしているルーズリーフにはその小説と同じ内容が書かれていること…
自分が覚えている限り、余すことなく全て語った。
俺は必死に澄香を説得した。
澄香を上手いこと説得できる根拠も証拠もないし、肝心のあのサイトにアクセスが出来ないので現物を見せることも出来ない。
でも何度も言い聞かせた。
分かってくれるかどうか、不安ではあったけど…。
そういうことかよ…。
一言一言が憎たらしいなこいつは。
まあでも、わかってくれただけ良しとするか。
俺はルーズリーフを持って澄香に別れを告げ、教室を出ていった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。