第3話

それが始まりだったんだね
28
2020/03/21 16:10
If story  EP1


部屋の中で妬ましいアラームが鳴り響く。
私は、それをうるさいと思いながら布団を握る力を強める。

「ヒカリ!起きなさい!今日が何の日かわかってんの!?」

お母さんが叫ぶ。うるさいな…。って…!

「もう7時半!?」

慌てて私は布団から出て、目覚まし時計を止めて階段を降りる。

そうだ、今日は待ちに待った高校の入学式。

可愛い制服を着れる、最初の日。

「おはようヒカリ。ほら、急いで朝ごはん食べちゃえ。」

お父さんが優しく声をかける。

「いただきます!」
「食べ終わったらすぐに着替えるのよ!もう!時間ないんだからね!」
「分かってるって!」

お母さんに急かされ、私は急いでご飯をかき込む。

「ごちそうさま!」

ご飯を食べ終え、私は制服に袖を通す。

初めての制服。それはこれから始まる新鮮な学校生活を予言しているようだった。

「おお…。似合ってるな。」
「可愛いわね!さすが私の娘よ!」

お父さんとお母さんが私を褒める。
なんだか、照れくさいな。

「さあさあ、車用意するから2人ともすぐに乗れ!」
「はーい!」
そして私とお母さんはお父さんの運転する車に乗ってこれから入る高校まで向かった。

車から学校を遠目に見ただけで"入学"というワードがひしひしと突き刺さる。見える景色は初々しさのオーラを纏っている。

「さあ、着いたぞ。」

お父さんが車を停め、私は車から出る。

「あっ!ヒカリ!」

車を降りた瞬間、私の小学校時代からの親友のユメミが声をかけてきた。私は急いでユメミの元へと駆け寄る。

「ヒカリおはよう!制服可愛いね!」
「いやいや、私なんかよりユメミの方が可愛いよ!」

ユメミの顔が少し赤らむ。

「ねえヒカリ、クラス表見た?」
「見てないけど…。」
「私とヒカリ、同じクラスだって!」

えっ!?

心底嬉しかった。ユメミと、また3年間一緒に頑張れる。早速のサプライズだ。

「やった!てことで、また3年間よろしくね!ヒカリ!」
「うん!…痛っ!」

ふと、私に誰かぶつかってきた。

それは結構顔立ちのいい男の子で…

え!?

「あっ…すみません!」
「い、いえ…。」

男の子は私に一言謝ってから足早に去っていく。

「何?運命の出会いってやつ?」

ユメミがからかってくる。

「ち、違うよ!」
「またまたぁ〜。でもあの男の子、結構かっこよかったよ?」
「えっ!?」
「あはは、図星かい?」

ユメミのバカ。変なことばっかり言わないでよ…。
私の体が熱くなる。もう!

「そろそろ入学式の準備お願いします!」

校門から出てきた教師らしき中年の男性が私たちに向けて大声で呼びかける。
私たちはそれを聞いて、さっき見たクラス順に並んだ。

「あっ。」

ふと、見つけてしまった。

「ヒカリ、もしかしてあの子…」
「うん…」

私たち、さっきぶつかってきた男の子と同じクラスだ。

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