第10話

第9話
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2024/08/16 13:33 更新
カナン×実弥   要素注意

前半のみ実弥視点
不死川実弥
チッ
無意識に舌打ちがでる。
目前では今、カナンと冨岡が手合わせの最中だ。
俺とカナンとの手合わせは数える程しかしてこなかった。
いや、やらせてもらえなかったが正しい。


危ないから。ただそれだけの理由で。


だから真剣で手合わせできてすごく嬉しかったのに、冨岡、こいつは簡単にご指名されて刀を交えられる。

腹立たしい。出来ることなら、カナンを独り占めしたい。



何を考えてるんだ俺は。ぶんぶんと頭を振る。
伊黒小芭内
なんだ急に。
不死川実弥
…なんでもねェよ
冨岡義勇
水の呼吸
アイツは。自分で技も作りやがって、俺らを逆撫でするような発言までして。なのにカナンから好かれているなんて。
また舌打ちが出る。


あの血で濡れた羽織は、俺がこっそり手に入れた。
カナンの一部と言ってもおかしくない羽織を、俺のものに。
なんという背徳感だろうか。



まだ手合わせは続く。水の呼吸は俺が使う風の呼吸のように技は派手ではない。使い手も多い。


その頂点に立つ男。

俺より、冨岡のほうが。
不死川実弥
チッ
腹立たしい。カナンに斬られた傷が痛む。


怪我なんてしょっちゅうする。生傷は絶えず体にできる。
なのに、この傷だけは特別だ。カナンが創り上げたあの刀で斬られた傷だから。

自分でも女々しいことはわかっている。だからこそ余計腹が立つ。

むしゃくしゃする。今すぐ誰かと剣を交えたい。


苛つきが頂点に達しそうな時、手合わせが終わった。



時透無一郎
次は不死川さんとカナンさんがいいんじゃない?
その時透の神の一声によって、一日ぶりの手合わせが始まった。違うところは、木刀であること。カナンが連戦しているということ。


今までのたった数回の手合わせで、カナンに勝てたことは一回もない。だが今日は勝てる。


そしたら。きっと。
伊黒小芭内
初め。


その合図で一気に飛び掛る。
不死川実弥
風の呼吸
壱ノ型  塵旋風 削ぎじんせんぷう そぎ


カナンはそれを軽く受け流す。

木刀を上へ。次の技を構える。


弐ノ型   爪々 科戸風そうそう しなとかぜ



さすがに堪えたのか、カナンは後ろへと跳ぶ。



その後も、技を出し続ける。


それでも攻撃はしてこない。この前の二の舞になりたくないようだ。



なら二の舞にならせてやる。こっちが勝つか、こっちが負傷するか。ただそれだけだ。


後ろへ下がる。指で挑発する。
思惑通りカナンがこちらへ接近する。カナンは呼吸が使えない。だから単純な剣術での勝負。勝てる。



バギッ



攻撃を防いだ時、カナンの木刀は綺麗に折れた。
時透無一郎
わっ。すごいなあ
不死川実弥
くそッ!
今回もこれで勝負は終わり。
こんな勝負ならやらなきゃ良かった。
上辺だけの褒めなんていらない。俺だけを見てほしい。


ずっとそうだ。泣き虫だった冨岡をあやして、俺は後回し。俺はずっと寂しかったんだ。竈門の野郎についても、俺には知らせずに腹賭けて。



なんなんだ。俺だけ。


握る拳に力が入る。そんな俺を察してか、伊黒が再戦を提案する。


俺は断った。ただの意地だった。
俺はこんな俺が大嫌いだ。






なんだ、これは。
実弥の心が僕へ流れ込んでくる。
痛い。泣きそうになるほどの感情。


手に持っていた折れた木刀が手から落ちた。
下を向く。今前を見たら泣いてしまいそうで。



なんて馬鹿なんだ僕は。
時透無一郎
どうしたの?カナンさん
夜桜 カナン
夜桜 カナン
ごめん、ちょっと体調悪いかも
伊黒小芭内
そんな体たらくで大丈夫か。
夜桜 カナン
夜桜 カナン
うん。ごめん
その謝罪は誰に向けたものなのか分からない。
落ちた木刀を拾って、木刀がまとめて置いてある所へ投げる。


次は無一郎くんと伊黒の番だ。
伊黒小芭内
いくぞ。



伊黒達の手合わせを見ながら、僕は義勇に聞かれない声量で実弥に話しかけた。
夜桜 カナン
夜桜 カナン
実弥
不死川実弥
チッ。なんだァ
夜桜 カナン
夜桜 カナン
好きだよ
不死川実弥
ばッ、はァ!?
夜桜 カナン
夜桜 カナン
声が大きい
反射的に実弥の口を手で覆う。幸い義勇には聞こえていないようだった。僕は実弥の目を見て続ける。
夜桜 カナン
夜桜 カナン
好きだよ。実弥の事が。大切にしたいと思ってる。だからこそ臆病になる時がある。実弥に対してね
夜桜 カナン
夜桜 カナン
だから…態度にできなくても、言葉にして伝える。
夜桜 カナン
夜桜 カナン
好きだよ
実弥はもうそれはそれは真っ赤になっていて、今にも飛んでいきそうだった。
不死川実弥
そうかよ…
頭を撫でる。ほんのすこしだけ。


これで少しでも不安が無くなればいいな。
義勇を見る。あの子は、どう思っているのだろうか。
いいや。今は実弥のことだけを考えよう。
夜桜 カナン
夜桜 カナン
この後うちへ来るか?
不死川実弥
…行く
夜桜 カナン
夜桜 カナン
わかった。一緒に帰ろう
そう言うと、実弥はすこしだけ嬉しそうな顔をした。
手合わせが終わり、各々帰っていく。義勇におやすみと言って、僕は実弥の手を掴んで歩き出す。
掴むと言うより繋いでいる。手をまるで恋人のようにし、隣に並んで歩く。
夜桜 カナン
夜桜 カナン
…なあ、僕らの関係はなんて名前だと思う?
不死川実弥
…急だなァ
夜桜 カナン
夜桜 カナン
さっき考えてたんだ。
夜桜 カナン
夜桜 カナン
僕らは恋人なんだろうか…僕はどうしたらいいんだろうか。
不死川実弥
…どうせどちらかなんて選べねェだろ
不死川実弥
ならいっそ俺ら2人とも平等に愛せよ。冨岡だけじゃねェ
俺を見ろ。



実弥の言葉に、僕の顔はみるみる赤くなった。僕の顔は自分で見なくても茹でダコのようになっているだろう。
実弥が笑う。
前に実弥を見た女性隊士達がきゃーきゃー言っていたのを思い出した。
夜桜 カナン
夜桜 カナン
お、おとこまえだな…
不死川実弥
はっ。昔っから男前だわァ
そうやって夜は更けていく。

明日、いや明後日は義勇の所へ行こう。



隣の実弥を見る。大きい背。ガタイも随分良くなって、もう立派な男だ。
道は長い。手に汗を少しかく。

不死川実弥
…もしよォ
不死川実弥
もし俺らを平等に愛せるようになったら
不死川実弥
"恋人"になれんじァねェの
夜桜 カナン
夜桜 カナン
…なるほど
一理ある、と頷く。
空いているもう片方の手で撫でてやる。まだ笑顔は幼い。



傍から見たら気味悪がられるかもしれない。




でもこれが僕らの形。
夜桜 カナン
夜桜 カナン
愛してるよ
見ているのは、天に浮かぶ月ただ一つ。
第8話





終わり

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