ガラス張りのオフィスでカップに口をつける
コーヒーはすでに冷めていた
壁一面のスクリーンには
世界中の支社データが並んでいる
昨日は一日中数字と向き合っていた
目と頭が限界で悲鳴を上げている
”このグループの繁栄のために”
幼い頃から祖父や両親にそう教育されてきた
「社長」という肩書きをとってしまえば
私は一体何者なのかわからなくなりそうだった
それくらい、私には何もない
ガラス越しの街は主張の強い建物が
綺麗に整えられすぎていて苦手だった
その時、控えめなノックの後で
ドアが開いた
秘書のジョンウォンが入ってくる
彼の声が滑らかに流れていく
今日も忙しそうだな
報告を終えたジョンウォンが
少し間を置いて私をみる
思わず顔を上げると
彼は目を逸らさずに私を見ていた
そうですか、とジョンウォンは小さく頷いて
再びドアの向こうへ消えていった
鏡の前に立つ
目の下にうっすらと影
寝不足を隠せないクマがあった
ポーチからコンシーラーを取り出して
完璧に消えるようにクマを隠した
不満はないけれど、
たまに息苦しさを感じる時がある
同期と楽しそうに喋りながら仕事をする
社員の女の子を見て、少し羨ましかった















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。