放課後、校舎は静かで、
教室から漏れる笑い声や
廊下を歩く生徒の足音だけが響いていた。
俺は一人で廊下を歩きながら、
昼休みに見たあなたの笑顔を思い出していた。
少しだけ、胸の奥が温かくなる。
角を曲がったその瞬間、
前から歩いてくる人と目が合った。
姫宮こあだった。
柔らかい笑みと穏やかな声 。
でも目の奥に何か鋭いものを隠している。
一瞬、足が止まる。
その声は柔らかく、
まるで偶然を装っているようだ。
でも、俺はその奥に計算があることを
薄々感じていた。
あっさり言うその口調に、
頭が一瞬真っ白になる。
昨日あなたがどんな顔で俯いていたか。
俺とサラが必死で守ろうとしていたか。
それを “ 計画 ” の一言で片づける神経が、
理解できなかった。
こあは俺にゆっくり歩み寄り、
柔らかく言葉を続ける。
即答だった。
たとえ葛葉がクズでも、
あなたを傷つける側に回るなんて、
絶対にできない。
声のトーンは優しく穏やかで、
猫をかぶっているのがわかる。
こあは微笑んだまま、目を細める。
こあは威圧的でもなく、
柔らかい声で、俺を見つめる。
その猫をかぶった表情に嫌悪感が増す。
表情には少し苛立ちが出てしまう。
すると 、こあが声のトーンを
少し低くして穏やかに言った。
まるで俺の全部を見透かして
いるかのように微笑するこあちゃん。
人の弱みにつけこんで
周りを利用しようとする。
姫宮こあは嫌いだ。
――最低だ。
頭では分かっている。分かっているのに
だめだ。
こんなの、乗るわけない。
……ない、はずなのに。
あなたが笑う顔が、頭に浮かぶ。
自分にだけ向けられる笑顔。
手を繋いで名前を呼ばれて隣を歩く未来。
完全な拒否は、もうできなかった。
こあちゃんは満足そうに微笑む。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。