綾瀬がコート内に入った瞬間 、綾瀬を取り巻く空気が変わった 。
一体どんな人物なのか 、と
烏養は前のめりになりながらコート内を見つめる 。
烏養は目の前に居る信じられない人物に 、自身を
疑った 。
コートの上には綾瀬と影山 、そして日向の三人 。
他のメンバーは 、烏養同様コート内を食い入るように見つめていた 。
日向は軽く二、三回跳ねると助走の態勢に入った 。
影山はそれを見て 、持っていたボールを突く 。
そして弧を描くようにボールを投げて綾瀬の頭上に
届ける 。
飛雄くんのトスに対する信頼があっての変人速攻 。
日向くんは 、よく目を瞑って打てるものだ 。
そこに 、ドンピシャに持っていく飛雄くんも凄い 。
日向くんがどのタイミングで 、
ネットからどれくらい離れた場所で飛んで 、
どの高さでアタックするのか 。
頭の中の歯車がカチッと噛み合った 。
久しぶりだ 、この感覚 。
私は 、空中にあるボールを日向くんに打つ 。
ボールは日向くんの手に吸い込まれる 。
そして 、力強いスパイクが決まった 。
部員から出てくる褒め言葉の数々 。
綾瀬は転がったボールを拾い 、カゴに直す 。
綾瀬の質問に 、何度も大きく頷く日向 。
感動しているのか目を輝かせて 、言葉にできない想いを噛み締めているようだ 。
綾瀬はそう言って 、微笑んだ 。
一見 、普段通りの振る舞いをしているように見えるが
実際は約二年ぶりにコートに立てた事 、ボールに触れる事が出来てテンション上げ上げ状態だ 。
今すぐ体育館を出て思い切り叫びたい 。
何なら 、もう一度ボールに触りたい 。
あわよくば " 頂の景色 " を _________
ああ 、これを考えるのは辞めておこう 。
辛くなるだけだ 。
そんな綾瀬の心情に気づいている者は誰もいなかった 。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。