「起きて」
1日経ったあと、
俺が彼女を起こしても、
彼女は起きなかった。
いや、起きないフリをしているのかもしれない。
そう思って俺はもう1回。
「起きて」
と言った。
それでも彼女の反応はない。
それでも微かに息をしている音は聞こえる。
「ねえ」
「起きろっつってんだろ」
俺は彼女の体をグイッと引っ張る。
「きゃっ」
小さく悲鳴をあげる彼女。
__________やっぱり起きてたんだね。
「…起きてたんだね」
「ねぇ。遊……おかしいよ、こんなのって……」
彼女が体を小さくし、小刻みに震えている。
おかしいって…。
おかしいのは俺の愛がわからない彼女の方だ。
「おかしいのは、俺の愛がわからない君の方だよ」
そっと、彼女の髪の毛を撫でる。
彼女はそれにビクッと反応する。
怯えちゃって、可愛い。
「こんなの…」
「こんなの愛じゃない……っ」
目元はタオルで隠されているからわからないが、
恐らく彼女は泣いている。
__________これが愛じゃない?
彼女には俺の愛が分からない?
俺だけにしか今は見れない彼女。
邪魔者はどこにもいない。
分からないならもっと…。
「君が愛をわからないなら、もっと、たっぷり、教えてあげるよ」
彼女にはまず、愛の印をつけなければいけないと思う。
1度、手首のロープを外すなど
彼女の体を解放し、
そっとカッターを握りしめ、
無理矢理彼女の上着を脱がせた。
「な、何するの…っ」
怯える彼女。
今、彼女はどんな目をしてるんだろう。
そう思って彼女の目元のタオルを外す。
__________あぁ、汚れてる。
あんなにキラキラしてた瞳は、
光などなく、真っ暗な瞳に変わってる。
それでも、俺は君を愛すよ。
__________どんなに汚い君でも。
「怖がらないで、痛くない」
そう言って、彼女の腕を握り、
カッターの刃を向ける。
白くて、柔らかくて、綺麗な腕。
その腕に刃を…。
「や、やめてっっ!」
刺そうとした瞬間彼女が俺を思いっきり突き飛ばした。
……どうして?
……嫌なの?
「……どうして?」
「もう、もういやっ!」
氷水で冷えきった足で、
よろけながら逃げようとする彼女。
__________無駄だよ。
俺から逃げられるわけがない。
誰よりも君への愛が強いのだから。
逃げようとする彼女を簡単に捕まえ、
後ろから引っ張り倒した。
「…っ!」
彼女はそのまま腰から思いっきり倒れた。
その隙に彼女の上に跨る。
「俺の愛がわからないの?」
「違う…!こんなの…!違う…!」
必死に抵抗する彼女。
でも男の力にかなうはずない。
俺は彼女の両腕を左手で掴み、
右腕で再びカッターを強く握った。
「い、いやだっっ…」
目に涙を浮かべる彼女。
彼女の白くて綺麗な腕に、
カッターを刺した。
「…い゛っ…」
苦痛の表情を浮かべる彼女。
そのまま、カッターをそっとズラす。
カッターの動きと同じように、
震える彼女の体。
「…できた。」
彼女の腕にカッターでかいた「Y」という俺の名前のアルファベット。
俺のモノ。俺のだけのモノ。
そういう意味で彼女の腕に名前をかいた。
彼女は「痛い」とひたすら泣いている。
_____もっともっと、俺の愛を刻んであげるからね。
……君が嫌という程俺の愛がわかるまで。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。