__ 僕と苑の両親は、本当に優しくて、暖かかった。
仲のいい、家族だった。
父さんは僕に、母さんは苑に、
なんとなくだけど性格が似ていた。
いや、まぁ、正しくは僕らが似たんだけど…、
ともかく、すごくにぎやかだった。
父さんは優しくて、色んなものを買ってくれた。
「母さんには内緒だよ」って、お菓子買ってくれて。
それでバレて、母さんに「甘すぎ!」って怒られて。
しかも、恐る恐る「…お菓子だけに、?」だなんて
聞いちゃって。あの時の母さんの顔、凄かったな…、
母さんは活発な人だったからさ、
みんなでよく旅行とかに行ったりもして。
車は母さんが運転してたから、
途中でたくさん寄り道して。
記念写真撮ったり、お土産買ったり、はしゃいで。
…楽しかったなぁ。
でも、それは10年前に終わってしまった。
僕がまだ7歳で、苑がまだ4歳の時だった。
その日、母さんと父さんは、二人で出かけていた。
結婚記念日だったらしい。
僕らは祖父母の家に預けられ、遊んでいた。
二人には思いっきり楽しんでほしかったから、
僕は笑顔で手を振った。苑も、笑顔だった。
次に両親に会った時、彼らは息をしていなかった。
幼かった僕らには、重すぎた出来事だった。
原因はひき逃げ。
暴走したトラックに突っ込まれて、即死だそうだ。
今思えば、長く苦しむことがなかったことだけは、
救いだったのかもしれない。
理解が全く追いつかなかった。
信じたくなかった。信じられなかった。
けれど、お医者さんやおばあちゃんとおじいちゃん、
親戚の人たち、近所の人たちの雰囲気を見て、
…あぁ、信じるしかないんだなって、思った。
その後、僕らは祖父母の元で暮らした。
苑はその時、まだ小さかったから、
両親のことはあまり覚えていないらしい。
だから僕は、たくさん2人の話をした。
自分も忘れることがないように。
苑が、あの暖かさを無かったことにしないように。
僕にとって、苑はたった一人の家族で。
何よりも宝物で、絶対に失いたくなくって。
何がなんでも守りたかった。
世界中が敵になっても、苑の全てを受け入れるし、
苑が笑ってくれれば、他に何もいらないし。
苑が死ぬほど僕のことを嫌いになったとしても、
愛を贈るよ。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!