過去編
僕たちは、大学時代から友達だった。
でも、関係はドロドロで、葛葉はあなたが好きで、僕もあなたが好きだった。でもあなたは葛葉が好きだったんだ。
キャンパスの芝生の上、三人並んで昼休みを過ごすのはいつもの光景だった。僕は雑誌を広げて、あなたは持ってきたお弁当のふたを開けて、葛葉はスマホをいじりながら時折あなたに話しかけていた。
あなたはそういって照れくさそうに笑った。
葛葉が茶化すように顔を覗き込むと、あなたは慌てて視線を逸らした。
その様子を隣で見ていた僕は、無意識に雑誌から顔を上げ、二人のやりとりに目をやる。葛葉があなたに向ける冗談めいた言葉や視線が、自分にはない何かを持っているように感じられ、胸の奥で小さな違和感が広がっていく。
その日の午後、葛葉とあなたは教室へ戻っていったが、僕はひとり、彼らの後ろ姿を見つめながら立ち尽くしていた。普段通りに仲良くしているはずなのに、あなたが葛葉に向ける無防備な笑顔や仕草が、どうしようもなく目に入ってしまう。
別の日、学食で三人でランチをしていたときも、葛葉はさりげなくあなたの肩に手を回し、冗談めいた口調でからかう。
あなたが真っ赤な顔で葛葉の手を払おうとすると、僕の胸にはまたあの違和感が込み上げる。
僕は気づかれないように息をつき、無理に微笑みを作った。それでも、視線の先であなたと葛葉が笑い合う光景がどうしても目に焼きついて離れなかった。
その夜、寮の自室に戻った僕は、スマホを見つめながらあなたの連絡先を眺める。何かメッセージを送ろうかと考えるが、彼女が葛葉と一緒にいることを想像すると、なんとなく手が止まってしまう。
僕は心の中で自分の嫉妬心を認めざるを得なかった。あなたの笑顔は自分にも向けられることがあるはずなのに、彼女の心が少しずつ葛葉に傾いているように感じてならない。見守るしかできない自分の立場が、無性に悔しくて仕方なかった。
だからね、葛葉。
浮気してくれて、ありがとう。
そういわれたとき、なんて奴だ、と思ったよ。
表向きは、葛葉の友達だから、庇ったけど、。目の前の彼女が、どんだけ傷ついているかがすぐわかった。
それと同時に、やっぱり、悲しませられるのは葛葉なんだな、とも思ったよ。
でも、僕の気持ちなんて、あなたは知らないから。あなたを助けることだけに集中しようと思った。
そういわれたとき、どうにかしたいと思った。あなたがかわいそうで、不憫でたまらないと思ったから。
だから、復讐しようって持ち掛けたんだよ。
学生時代から好きだったのに、葛葉ばっかり見て、僕には見向きもしなかったのに、泣いてるあなたを見て、助けないわけにはいかないと思ったんだ。
僕のことを好きにならなくていいから、葛葉に縛られているあなたを助けたかった。
卑怯だけど、卑怯じゃない。正攻法で。
ちゃんとデートして、とにかくあなたに振り向いてほしい一心で。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。