第8話

7
298
2024/04/29 09:00 更新
逃げたくてたまらなかったはずなのに、私の足はピタリと止まった
どうして呼び止めるの?
私と話したいってそう思ってくれてるの?
深呼吸をして、できるだけ表情を消す
期待をうっかり滲み出てしまわないように、不機嫌そうな表情を顔に張り付けてから振り向いた
四季凪アキラ
なんですか?
渡会雲雀
セラ夫は?
ああ、期待してた自分がバカみたい
たらいが私に話しかける理由なんて、セラ夫のことくらいしかないですし、
考えれば、すぐわかったはずなのに…
四季凪アキラ
知らないですよ、朝練じゃないですか?
手短に答えて早々に歩き出すけれど、たらいとは悲しいことに同じクラスだ
歩く方向が同じになるのは当然で、たらいは私の数歩後ろをついてくる
触れようと思えば、触れられるほど近くにいるのに
心は地球の裏側…もしくはそれ以上、遠い
渡会雲雀
朝練か、お前とちがってセラ夫は努力家だよな
四季凪アキラ
わざわざ嫌味を言うために私に話しかけるなんて、暇なんですね
たらいの方は見ずに言い返す
何かと突っかかってくるたらいとは、まだバイト先も同じで、やりにくいったらない
でも、辞める気にもならなくて……
嫌われてても、同じ空間にいれるだけでいい
こんな調子で心の奥にしまい込んだはずの恋心が時々私を惑わそうとする
そのたびに私を苦しめるあなたが嫌いだって、自分に言い聞かせる
ウソと本音の間にあるような感情で、私は君への想いをぼかす…
渡会雲雀
本当、お前と喋っているとイライラすんな
四季凪アキラ
なら、かかわらなきゃいいじゃないですか
彼と自分の言葉が、どんどん私の心をすり減らしていく
背後で舌打ちが聞こえた
でも私は、構わず教室に入る

プリ小説オーディオドラマ