今日の練習が、終わってしまった。
さあ夜が来るぞ。
徹に寝落ち電話頼もう。そうしよう。
うんそれがいい。
1人でそう決めて、及川に自分が寝落ちするまで電話を繋げておいてもらおうと考えたのである。
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浴場でついうっかり眠ってしまっていて、お風呂から上がった時間は夜の10時半をとうに超えてしまっていたのだ。
脱衣場から直で外に向かい、急いで電話をかけたところ、きっともう眠ってしまったのだろう。
珍しく電話が繋がらなかった。
それに変わるように電話が1件入っており、その着信が誰なのか見てみると、『道宮結』の文字が。
着信があったのは恐らく藍原がいねむってしまっていた時間帯。
急いで不在着信のところから折り返しの電話をかける。
案外すぐに繋がった電話越しから折り返しが来るとは思っていなかったかのような驚いた声が返ってきた。
道宮『え!?あなた?!ごめん、こんな忙しいときに!』
道宮『えっと…その、あのね?』
道宮『インハイ予選、どうしてもお願いできない…?』
いままでの藍原なら断っていた。
しかし、青葉城西との練習試合を通して、バレーの楽しさを痛感してしまったのだ。
機会があるなら是非とも出たい。
でも、正直恐怖が勝っていた。
また足を痛める恐怖、仲間が居なくなる恐怖。
悩みに悩んだ末、藍原が出した答えは『保留』
道宮『そうだよね、やっぱ出れない…え?』
道宮『やったあ!ありがとう!朝練も放課後も練習してるからいつでも来てね!!』
いや、出るとも言ってない。
が心の底でホッとしている藍原もいて。
少し刺すような冷たさを孕んだ春風ではなく、柔らかく包み込まれるような春風が藍原の頬を掠めたのである。
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静かに階段を1段飛ばしで駆け上がる。
どうしよう。まあすぐ寝れるか。
部屋の扉を開けようとしたとき、タッと足音が聞こえてきて、やべえなんか来た。
と急いで部屋に走ってかけこもうとすると、「藍原さん待ってください!」と誰かが小声で呼びかけてきた。
あはは、と後頭部に手をやり、笑う山口。
ちょっと待て、?
私は一人で寝れそうにない。ぐっちーも寝れない。よし、こうしよう。
そう言うととても驚いた顔をする山口の後ろから、「僕もいいですか」と言ってぬっと現れたのは月島。
月島も来たところで改めて部屋に招こうとしたとき、寝ぼけ顔の影山と日向もやってきて、結局1年生組と寝ることになった。
藍原が壁側に敷き、少し離れたところに男子4人が布団を敷く。
1年生組が揉めに揉めた末、藍原の隣で寝ることになったのは影山。
布団に転がって早々、日向月島山口の穏やかな寝息が聞こえてきて、自分が最後だったらどうしようと焦り始める藍原。
こちらを向きながらそう話す影山に向かって親指を立てて、グッと突き出す。
そしてそのまま影山が起きときますから早く寝てください。と言ってくれたためお言葉に甘え、早く寝れるよう努力をした。
そのおかげで次起きた時は、もうすっかり朝になっていて1年生組の穏やかな寝顔に癒される藍原であった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!