またまた呼びに来てくれた川西に背中を押されるようにして、体育館へ入った。
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『体育館のAコートにおいて、男子バレー準決勝、2年5組対3年2組!Bコートでは同じく、男子バレー準決勝、3年3組対3年4組!』
体育館内でのアナウンスが鳴り響き、ホイッスルと共に「おねしゃす!!」と挨拶を交わす。
結構な人数の生徒が集まっており、体育館の熱気は増している。
サーブ権は先にこちら。
藍原が先にサーブを打って先制点を先取したいところである。
ふっ、
息をついて、キュッとシューズを鳴らしながら助走をし、右手が赤く腫れ上がってしまうのではないかと思わされるくらい強烈なサーブを打つ。
唇をぐっと噛み締めてボールの行方を目で追うと、向こうのコート内にコロコロと転がっていた。
3年生はなんだアレと困惑している様子が見られたが、天童は「まあまあ」とほかのメンバーをたしなめながら楽しそうな笑みを浮かべた。
藍原も心做しか楽しくなってきて、ぐっと腕まくりをすると、ジャンプフローターサーブを打つ。
定まらぬ軌道でボールは弧を描くいたが、相手チームにすっかりレシーブされてしまった。
しかし、一度で返されたそのボールは勢い衰えることなくそのままネットを越える。
藍原を狙って打たれたボールをとっさに拾い上げたが、これでセットアップができなくなってしまった。
藍原があげたボールを川西が引き継ぎ上げるのを見計らって、自身にトスを呼ぶ。
そしてそのまま、持ち前のスパイクサーブでツーアタックを決めたが、天童に見事にドシャットされてしまった。
あのニンマリと笑う顔をぶち殴りてえ。
と少々思考が荒い藍原でした。
そのころ川西は下の名前で呼ばれた…!とキラキラしていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!