冷ややかな声を出したジルベールが手を振ると、第二、第三の矢が飛んできた。レグルスは私を庇うように振り払うも、攻撃の手はやまない。
私は、ジルベールたちに騙されたのだ。
弓ではなく、炎が飛んできた。
庭園に火の手が上がる。
レグルスは私の手を取った。
飛び出してきたレオンがレグルスに切りかかる。
レグルスは私を突き飛ばすと、剣でレオンの攻撃を受けた。だが、レオンはひるまず、何度も何度も切りかかる。
私は魔術を発動させ、レオンの足を氷漬けにしようとした。
だが、そんな私を――アンリが捕まえる。
次々にアンリから攻撃が繰り出され、私は防戦一方だ。上からは弓矢や魔術も飛んでくる。
相手が魔王でもわかりあってくれると願っていた。
呑気に考えていた自分が馬鹿みたいだし、裏切られて悲しかった。
攻撃を避けながら、どうにかレグルスとこの場から逃げようと考えていると、カッ!と背後から光が上がった。
レオンを追い詰めていたレグルスが大きな木の側まで来た途端、地面に隠されていた魔法陣が光り、彼を拘束した。光の縄のようなものがレグルスを捕らえ、レオンの刃が、弓矢が、魔術が、レグルスの元に迫る。
私が叫ぶ。
世界はスローモーションになり、私は彼を守るように飛び込み、――辺りが真っ白に染まった。
その場にへたり込んだ私の背を、ポムが優しく撫でた。
私の身体は震えていた。三人に裏切られたことがショックで、レグルスを失うかもしれないと思ったら怖くて、……そして、そこで記憶は途絶えている。
ポムに手招かれる。木のうろに水瓶が置かれており、中を覗くとレオンとアンリの姿が見えた。二人ともきょろきょろと部屋を見渡し、慌てたように何かを言い合っている。
どこかからレグルスの声が聞こえた。
彼らは私の姿が見えなくて慌てているのだろう。
正直、二人の元に戻るつもりはなかったけれど――
レグルスが悪い魔王じゃないということは思い出すことができた。
彼に恋する気持ちは……まだだ。
レグルスとの結婚を考えてたということは、私は元の世界に戻る気もなかったってことで……、今の私には、そのまでレグルスが愛しくてたまらない、という想いはまだ湧いてこない。
ポムの手を取る。来た時と同じような浮遊感に包まれ、私の身体は再び宿屋へと戻った。開けっ放しの部屋の扉の前に私が現れると――
蒼白になった二人に駆け寄って来る。ポムの姿を隠さなくてはと思ったが、彼は既に消えていた。
根が正直なレオンはすぐに動揺したが、アンリは飄々としていた。
アンリの説明の途中で、レオンが眉を顰めた。
外がやけに騒がしい。
私も気になってそちらに意識をやると、何やら揉めているような声が聞こえ、誰かが宿屋の階段を駆け上がってきた。騎士が私達の部屋の扉を勢いよく開ける。


















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!