第20話

20、罠
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2025/12/05 09:00 更新
ジルベール
ジルベール
魔王を愛する聖乙女など不要だ
冷ややかな声を出したジルベールが手を振ると、第二、第三の矢が飛んできた。レグルスは私を庇うように振り払うも、攻撃の手はやまない。
私は、ジルベールたちに騙されたのだ。
ミコ
ミコ
ひどい! 祝福してくれるって言ったのに……騙したの⁉
ジルベール
ジルベール
ああ、ミコ。可哀想に。魔王に精神を支配されてしまって……
ミコ
ミコ
私は正常よ。支配されてなんかない
ジルベール
ジルベール
いや、きみは異常だ。歴代の聖乙女は必ず王族と結婚してきたというのに、きみは僕を選ばなかった。きみは聖乙女として失格だ!
ジルベール
ジルベール
魔術師たちよ、前へ
ミコ
ミコ
ジル……、きゃあ!
弓ではなく、炎が飛んできた。
庭園に火の手が上がる。
レグルスは私の手を取った。
レグルス
レグルス
ミコ。魔界に戻るぞ
レオン
レオン
そうはさせない!
飛び出してきたレオンがレグルスに切りかかる。
レグルスは私を突き飛ばすと、剣でレオンの攻撃を受けた。だが、レオンはひるまず、何度も何度も切りかかる。
ミコ
ミコ
レオン! やめて!
私は魔術を発動させ、レオンの足を氷漬けにしようとした。
だが、そんな私を――アンリが捕まえる。
アンリ
アンリ
いけませんね、ミコ。貴女の相手は私です
ミコ
ミコ
アンリ……
アンリ
アンリ
「氷」と「炎」ならば、私の方が実力は上です
ミコ
ミコ
くっ
次々にアンリから攻撃が繰り出され、私は防戦一方だ。上からは弓矢や魔術も飛んでくる。
ミコ
ミコ
(私は三人のことを信じてたのに)
相手が魔王でもわかりあってくれると願っていた。
呑気に考えていた自分が馬鹿みたいだし、裏切られて悲しかった。
攻撃を避けながら、どうにかレグルスとこの場から逃げようと考えていると、カッ!と背後から光が上がった。
レグルス
レグルス
チッ!
アンリ
アンリ
……かかりましたね
レオンを追い詰めていたレグルスが大きな木の側まで来た途端、地面に隠されていた魔法陣が光り、彼を拘束した。光の縄のようなものがレグルスを捕らえ、レオンの刃が、弓矢が、魔術が、レグルスの元に迫る。
ミコ
ミコ
やめて! レグルス!
私が叫ぶ。
世界はスローモーションになり、私は彼を守るように飛び込み、――辺りが真っ白に染まった。
ミコ
ミコ
…………
ミコ
ミコ
(そうだ。私は、三人に騙されて……、攻撃されたんだ……)
その場にへたり込んだ私の背を、ポムが優しく撫でた。
私の身体は震えていた。三人に裏切られたことがショックで、レグルスを失うかもしれないと思ったら怖くて、……そして、そこで記憶は途絶えている。
ポム
ポム
(ミコ)
ポムに手招かれる。木のうろに水瓶が置かれており、中を覗くとレオンとアンリの姿が見えた。二人ともきょろきょろと部屋を見渡し、慌てたように何かを言い合っている。
ミコ
ミコ
ここは、さっきまでいた宿屋?
レグルス
レグルス
どうやらあの二人は目覚めたようだな
どこかからレグルスの声が聞こえた。

彼らは私の姿が見えなくて慌てているのだろう。
正直、二人の元に戻るつもりはなかったけれど――
ミコ
ミコ
レグルス。どうやったらあなたの力は戻るの?
レグルス
レグルス
……記憶が戻ったのか?
ミコ
ミコ
全部じゃないよ。私はあなたとの関係を認めて欲しくて、ジルたちに会いに行って、そのせいであなたは力を落とす羽目になってしまったんだね
レグルスが悪い魔王じゃないということは思い出すことができた。
彼に恋する気持ちは……まだだ。
レグルスとの結婚を考えてたということは、私は元の世界に戻る気もなかったってことで……、今の私には、そのまでレグルスが愛しくてたまらない、という想いはまだ湧いてこない。
レグルス
レグルス
力の一部は、城に置いてきた
ミコ
ミコ
最後に戦ったあの場所?
レグルス
レグルス
そうだ。それを使えば、ミコの記憶は戻るはずだ
ミコ
ミコ
でもそれ、あなたの力なんでしょう。私の記憶を戻すより、あなたが力を取り戻すのに使った方がいいんじゃない?
レグルス
レグルス
いや。ミコの記憶を戻すのに使って欲しい。今の私は動けそうにないんだ
ミコ
ミコ
わかった。じゃあ、城に帰らないといけないんだね
レグルス
レグルス
だが、ポムの力では同じ場所からしかこの異空間に出入りできない。つまり……
ミコ
ミコ
アンリたちがいる場所に戻るしかないってこと?
レグルス
レグルス
そうだ
ミコ
ミコ
わかった。行ってくるね
ポムの手を取る。来た時と同じような浮遊感に包まれ、私の身体は再び宿屋へと戻った。開けっ放しの部屋の扉の前に私が現れると――
レオン
レオン
ミコ!
アンリ
アンリ
ミコ!
蒼白になった二人に駆け寄って来る。ポムの姿を隠さなくてはと思ったが、彼は既に消えていた。
レオン
レオン
どこに行っていたんだ、ミコ! 探したぞ!
アンリ
アンリ
まさか、貴女に一服盛られるとは思いませんでした。これは、魔王の力が入ったりんごのお茶ですか? カモミールティーとは……騙されましたよ
ミコ
ミコ
私も、二人には騙されていたからおあいこじゃない?
アンリ
アンリ
騙すとは? 貴女の恋人だと偽ったことをまだ根に持っているのですか?
ミコ
ミコ
違う。私と魔王を祝福するなんて言って、ジルも、レオンも、アンリも、私たちを殺そうとしたことだよ
レオン
レオン
……記憶が戻ったのか?
根が正直なレオンはすぐに動揺したが、アンリは飄々としていた。
アンリ
アンリ
聖乙女を殺すだなんてとんでもない。貴女を捕らえた後、魔王に関する記憶を忘却の魔術で消させてもらっただけです
アンリ
アンリ
ですが、目覚めた貴女は魔王の記憶どころか、我々の記憶も失くしてしまっていた。非常に残念です
ミコ
ミコ
アンリ……っ!
レオン
レオン
…………ん?
アンリの説明の途中で、レオンが眉を顰めた。
外がやけに騒がしい。
私も気になってそちらに意識をやると、何やら揉めているような声が聞こえ、誰かが宿屋の階段を駆け上がってきた。騎士が私達の部屋の扉を勢いよく開ける。
騎士
ジルベール様! ミコを発見しました!
騎士
行方不明になっていたレオンとアンリ様も一緒です!
ミコ
ミコ
!!!

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