ポムはどこにでも自在に現れることができるようだ。
城を脱出する際にどこで落ち合うかは打ち合わせていなかったが、彼ならきっと、私が来て欲しいと思った時に来てくれるのではないかと思っていた。
ポムは頷くと私の手を取った。
身体が宙に浮いたような感覚がして、気がつくと夜の森の中に立っていた。
真っ暗な森の中をポムが進んでいく。
動物の気配も人の気配も感じない。暗くて静かな場所だ。
ポムは洞窟のような場所で足を止める。
レグルスの声は洞窟の中から聞こえてくる。
私は中の様子を窺おうとしたが、
ポムに肩をつつかれた。
こっちこっちと手招きされ、私は迷ったがついて行くことにする。
真っ暗な森を進むと、ちょろちょろと水音が聞こえた。
どうやら小川が流れているらしい。ポムが指をさして教えてくれる。
私は訳もなくその水に触れたくなり、かがんで水に手を浸した。
ぱちっと頭の奥で火花が散った。
ここは魔界だ。
今は暗くて不気味でしかない森だけれど、ここは本当は緑豊かな美しい場所だったようだ。
のどかな小川に手を浸し、レグルスと微笑み合った――ような気がする。隣でしゃがんだポムもにこにこして、私の真似をした。
立ち上がったポムは再び私を手招いた。
拓けた場所に枯れ木がたくさん並んでいる。
その木に触れると――私の頭の中では、真っ赤なりんごがたくさん実る光景が思い起こされた。
「どうしてりんごの木を植えたの?」と問う私と、
「ミコはりんごが好きなんだろう?」と言う魔王……、いや、レグルス。
だけどここは、魔王の力が失われた時に枯れてしまった……?
ポムが私の左手に触れた。
今はジルベールが嵌めた指輪があるそこには――本当はすごく綺麗な金の指輪が嵌っていた。レグルスが嵌めてくれたのだ。私の頭の中で記憶が蘇る。
呆れたように溜息を吐くレグルスの手を取り、私は彼を説得した。
レグルスに問われた私は、「できれば」と控えめに頷いた。
ジルベールは魔王レグルスを城に招待し、正式に友好の契りを結びたいと申し出てくれた。
庭園には魔王を迎えるためのパーティー準備が施され、当日、私はレグルスと共に庭園へと降り立った。
――だけど、料理や花で飾り付けてあるのに、会場には誰もいなかったのだ。
私がきょろきょろと周囲を見回していると……
レグルスが私を引き寄せる。
私が立っていた場所には矢が刺さっていた。
びゅん、と弓を弾く音。いつの間にか、城のバルコニーには弓兵が並んでおり、こちらに向かって何本もの矢が放たれた。レグルスが払い落としてくれたおかげで、私に矢は当たらなかったが、皿や花瓶が割れる音が続いた。
私も驚いて「え?」と口にした。ジルベールは冷ややかに言い放つ。
















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!