第19話

19、記憶を探しに
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2025/11/28 09:00 更新
ポムはどこにでも自在に現れることができるようだ。
城を脱出する際にどこで落ち合うかは打ち合わせていなかったが、彼ならきっと、私が来て欲しいと思った時に来てくれるのではないかと思っていた。
ミコ
ミコ
お待たせ、ポム。魔王のところに案内してくれる?
ポムは頷くと私の手を取った。
身体が宙に浮いたような感覚がして、気がつくと夜の森の中に立っていた。
ミコ
ミコ
ここ、どこ……?
ポム
ポム
(こっちだよ)
真っ暗な森の中をポムが進んでいく。
動物の気配も人の気配も感じない。暗くて静かな場所だ。
ポムは洞窟のような場所で足を止める。
ミコ
ミコ
ここに、魔王が……?
ポム
ポム
(うん)

レグルス
レグルス
ミコ

ミコ
ミコ
……魔王?
レグルスの声は洞窟の中から聞こえてくる。
私は中の様子を窺おうとしたが、
レグルス
レグルス
俺の身体はそこにはない
ミコ
ミコ
え?
レグルス
レグルス
声だけをお前に届けている
ミコ
ミコ
……あなたは弱っているの?
レグルス
レグルス
ふっ。あの三人にまんまとしてやられたからな。ミコも見ていただろう。……って、ああ。そうか。今のお前は記憶を失っているんだったな……
ミコ
ミコ
もし良かったら、教えて欲しいの。いったい、何があったの?
レグルス
レグルス
……教えるのは構わない。だが、お前はそれを信じられるのか? お前は奴らに「魔王は悪だ」と吹き込まれているのだろう?
ミコ
ミコ
…………
レグルス
レグルス
だから、ミコ。お前はまず、記憶を取り戻せ
ミコ
ミコ
どうやって?
レグルス
レグルス
お前の記憶の欠片が眠る場所に案内する
ポムに肩をつつかれた。
こっちこっちと手招きされ、私は迷ったがついて行くことにする。
真っ暗な森を進むと、ちょろちょろと水音が聞こえた。
どうやら小川が流れているらしい。ポムが指をさして教えてくれる。
私は訳もなくその水に触れたくなり、かがんで水に手を浸した。
ミコ
ミコ
あっ
ぱちっと頭の奥で火花が散った。
ここは魔界だ。
今は暗くて不気味でしかない森だけれど、ここは本当は緑豊かな美しい場所だったようだ。
のどかな小川に手を浸し、レグルスと微笑み合った――ような気がする。隣でしゃがんだポムもにこにこして、私の真似をした。
ミコ
ミコ
私はここに、来たことがある?
立ち上がったポムは再び私を手招いた。
拓けた場所に枯れ木がたくさん並んでいる。

その木に触れると――私の頭の中では、真っ赤なりんごがたくさん実る光景が思い起こされた。

「どうしてりんごの木を植えたの?」と問う私と、
「ミコはりんごが好きなんだろう?」と言う魔王……、いや、レグルス。

だけどここは、魔王の力が失われた時に枯れてしまった……?
ポム
ポム
(ミコ)
ポムが私の左手に触れた。
今はジルベールが嵌めた指輪があるそこには――本当はすごく綺麗な金の指輪が嵌っていた。レグルスが嵌めてくれたのだ。私の頭の中で記憶が蘇る。
レグルス
レグルス
本当に奴らが俺たちを祝福したいと言っているのか?
ミコ
ミコ
うん
レグルス
レグルス
冗談だろう? あれだけ妨害しておいて、信じられるわけがない
呆れたように溜息を吐くレグルスの手を取り、私は彼を説得した。
ミコ
ミコ
ジルは私が結婚して、魔界に行っちゃうことの方が嫌みたい。『聖乙女』の加護が薄れるとかなんとかって……。
だから、レグルスと結婚しても、リムフローレ国のために祈りを捧げ続けるって約束したら、認めてくれたよ
レグルス
レグルス
はっ。結局はお前の力目当てか
ミコ
ミコ
レオンは泣いてたけど、私がレグルスのことが好きだって時間をかけて説明したらわかってくれたよ。
……泣いてたけど
レグルス
レグルス
ふん。振られたというのに、いつまでも女々しい奴め
ミコ
ミコ
アンリはあなたや魔界のことに少し興味があるみたい。魔界産のものとか、不老不死の秘密とかあったら教えて欲しいって言ってた
レグルス
レグルス
……そいつが一番何を考えているかわからなくて不気味だが……
レグルス
レグルス
……ミコは、俺と奴らに仲良くして欲しいのか?
レグルスに問われた私は、「できれば」と控えめに頷いた。
ミコ
ミコ
ジルたちには困らされることもあったけど、……でもみんな、悪い人たちじゃないんだ。この世界に来て、何もわからなかった私を励ましてくれたり、優しくしてくれた人たちだから、できればこの先も友人として交流していけたらな、とは思ってる
レグルス
レグルス
……………………。
……わかった。王子の招待とやらに応じよう
ミコ
ミコ
いいの?
レグルス
レグルス
ミコとの仲を見せつけてやるのも悪くないからな
ジルベールは魔王レグルスを城に招待し、正式に友好の契りを結びたいと申し出てくれた。

庭園には魔王を迎えるためのパーティー準備が施され、当日、私はレグルスと共に庭園へと降り立った。

――だけど、料理や花で飾り付けてあるのに、会場には誰もいなかったのだ。
レグルス
レグルス
どういうことだ?
ミコ
ミコ
サプライズ……とかなのかな?
私がきょろきょろと周囲を見回していると……
レグルス
レグルス
ミコ! 危ない!
レグルスが私を引き寄せる。
私が立っていた場所には矢が刺さっていた。
レグルス
レグルス
ちっ。罠か
ジルベール
ジルベール
――放て
びゅん、と弓を弾く音。いつの間にか、城のバルコニーには弓兵が並んでおり、こちらに向かって何本もの矢が放たれた。レグルスが払い落としてくれたおかげで、私に矢は当たらなかったが、皿や花瓶が割れる音が続いた。
レグルス
レグルス
これはどういうことだ。お前たちの大切な聖乙女が怪我をするところだったぞ?
ジルベール
ジルベール
その娘は聖乙女ではない
レグルス
レグルス
は?
私も驚いて「え?」と口にした。ジルベールは冷ややかに言い放つ。
ジルベール
ジルベール
魔王を愛する聖乙女など、聖乙女として認められない。この国には不要だ

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