ついてきてしまったアンリは、すぐに馬車を探してくれた。
通りがかった辻馬車を止めて御者と交渉する。中には四人家族が乗っていたが、お金を渡して降りてもらうことにしたのだ。アンリが銀貨を出すと、善良な家族はどうぞどうぞと譲ってくれる。
アンリと離れる方法は後で考えよう。
馬車に乗り込む私だが、馬車の外壁にドンと手がつかれた。
ぜえはあと息を切らしたレオンが現れ、先に乗っていたアンリは目を丸くした。
アンリはレオンの同行も許可した。
私たち三人が乗り込み、馬車は走り出す。
レオンの行動は、アンリがそそのかしたものだったらしい。
そうなったら、二人の立場はかなり危うい。
しかし、二人は爽やかな笑顔できっぱりと言い切った。
この調子だと、「魔王の元に乗り込む」と言ったら大反対されてしまいそうだ。なんとかして二人から離れないと。
辻馬車を何度か乗り換え、私たちが着いたのは城から離れた町だった。
太陽は西に傾き、今夜はここで宿をとることに決めた。
私はメイド服から町娘の服に着替え、レオンやアンリも地味な旅装束に着替える。
宿は三人部屋が空いておらず、二人と一人に別れることをレオンもアンリも拒否したため、仕方なく二人部屋をとり、レオンが床に寝ることになった。
軽く夕食をとった後、私は宿のおかみさんに頼んでティーセットを借りた。
ポットの中に茶葉を入れ、――私はそこにあるものを混ぜた。
ポムにもらったリンゴチップスだ。肌身離さずに隠し持っていたのだが、逃げている時にボロボロに砕けてしまっていた。それをこっそり入れて、お湯を注ぎ、ポットの蓋を閉める。
澄んだ金色のお茶をカップに注ぐと、甘い香りが充満した。
私がカップに口をつけると、二人もお茶を口にした。
ほっ。
レオンは倒れ込み、アンリも椅子に座ったまま眠ってしまった。
りんごをそのまま口にするわけじゃないからどうだろうと思ったが、効果はあったようだ。私はお茶を飲んではいない。口をつけて飲むふりをしただけだ。
強引にとはいえ、ここまでついてきてくれた二人には情はあるけれど……。
本当に私と魔王が恋人だったのかを確かめたい。
魔王と会ったら――記憶が蘇るかもしれない。
コンコン。
ノックの音がして扉を開けると、ポムがにっこり微笑んで立っていた。















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。