第18話

18、逃避行は三人で?
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2025/11/21 09:00 更新
ミコ
ミコ
アンリ、本当に大丈夫だから
アンリ
アンリ
お構いなく。乗りかかった船です
アンリ
アンリ
というか、想いを寄せている女性が危ない橋を渡ろうとしているのに、「じゃあ気を付けてね」と見送れるわけがないでしょう
ついてきてしまったアンリは、すぐに馬車を探してくれた。
通りがかった辻馬車を止めて御者と交渉する。中には四人家族が乗っていたが、お金を渡して降りてもらうことにしたのだ。アンリが銀貨を出すと、善良な家族はどうぞどうぞと譲ってくれる。
アンリ
アンリ
さあ、行きますよ。ミコ!
ミコ
ミコ
う、うん……
ミコ
ミコ
(仕方ない。とにかく城からは離れなきゃだし……)
アンリと離れる方法は後で考えよう。
馬車に乗り込む私だが、馬車の外壁にドンと手がつかれた。
レオン
レオン
ミコ!
ミコ
ミコ
レ、レオン……⁉
ぜえはあと息を切らしたレオンが現れ、先に乗っていたアンリは目を丸くした。
アンリ
アンリ
レオン君? まさか、追いかけてきたのですか?
レオン
レオン
ああ。メイド姿のミコの後を、ずっと追って来た。服が違っても、俺がミコを見間違えるはずもない
アンリ
アンリ
ストーカーですか? 
…………まあいいでしょう。言い争う時間が勿体ない。早く乗って
アンリはレオンの同行も許可した。
私たち三人が乗り込み、馬車は走り出す。
レオン
レオン
どこへ行くつもりなんだ?
アンリ
アンリ
さあ。今はジルベール様から逃げることしか考えていません。それよりレオン君、あなた、ミコのことは諦めたはずでは?
レオン
レオン
アンリ様こそ。わざわざ俺が幽閉されている牢まで来て、「参列を許されている式が、貴方がミコに想いを伝えられる最後の機会ですね」なんて助言しに来るなんて……。どうせ、俺が騒ぎを起こしている間に、ミコを連れ出そうとでも考えていたのでしょう
アンリ
アンリ
当てにはしていませんでしたよ。隙が生まれればいいなぁとは思っただけで
アンリ
アンリ
……まさか、追いかけてくるとは思いませんでしたけど
レオンの行動は、アンリがそそのかしたものだったらしい。
ミコ
ミコ
でも、ジルは二人がいなくなっていることにすぐに気づいちゃうんじゃない?
そうなったら、二人の立場はかなり危うい。
しかし、二人は爽やかな笑顔できっぱりと言い切った。
アンリ
アンリ
貴女を守ること以上に大切なものなどありません
レオン
レオン
ミコといられるのなら、俺はどうなっても構わない
ミコ
ミコ
う、うーん……
この調子だと、「魔王の元に乗り込む」と言ったら大反対されてしまいそうだ。なんとかして二人から離れないと。


辻馬車を何度か乗り換え、私たちが着いたのは城から離れた町だった。
太陽は西に傾き、今夜はここで宿をとることに決めた。
私はメイド服から町娘の服に着替え、レオンやアンリも地味な旅装束に着替える。
宿は三人部屋が空いておらず、二人と一人に別れることをレオンもアンリも拒否したため、仕方なく二人部屋をとり、レオンが床に寝ることになった。

軽く夕食をとった後、私は宿のおかみさんに頼んでティーセットを借りた。
ミコ
ミコ
二人とも、お茶を淹れるね
アンリ
アンリ
私が淹れましょうか?
ミコ
ミコ
ううん。私が淹れるよ。任せて
ポットの中に茶葉を入れ、――私はそこにあるものを混ぜた。
ポムにもらったリンゴチップスだ。肌身離さずに隠し持っていたのだが、逃げている時にボロボロに砕けてしまっていた。それをこっそり入れて、お湯を注ぎ、ポットの蓋を閉める。
澄んだ金色のお茶をカップに注ぐと、甘い香りが充満した。
レオン
レオン
何のお茶だ?
ミコ
ミコ
カモミールティーだよ。リラックスできる茶葉をお願いしたから
アンリ
アンリ
この宿の独自ブレンドでしょうか。城で飲むカモミールティーよりも香りが強いですね
ミコ
ミコ
うん。良い匂いだね
私がカップに口をつけると、二人もお茶を口にした。
アンリ
アンリ
……疲れているんでしょうか。なんだか、急に眠気が
レオン
レオン
あ、ああ。俺も……
ミコ
ミコ
無理しないで休んで。明日も遠くに移動するんでしょう?
アンリ
アンリ
ええ……
レオン
レオン
……待て、ミコ。この茶、本当にカモミールティーか?
ミコ
ミコ
(ぎくっ)
レオン
レオン
っ、この感覚、前にアップルパイを食べた時と同じ――……
レオン
レオン
…………
アンリ
アンリ
…………
ほっ。
レオンは倒れ込み、アンリも椅子に座ったまま眠ってしまった。
ミコ
ミコ
ふう。うまくいって良かった……
りんごをそのまま口にするわけじゃないからどうだろうと思ったが、効果はあったようだ。私はお茶を飲んではいない。口をつけて飲むふりをしただけだ。
ミコ
ミコ
ごめんね、二人とも
強引にとはいえ、ここまでついてきてくれた二人には情はあるけれど……。
ミコ
ミコ
(私は本当のことが知りたい。魔王に会って、直接話がしたい)
本当に私と魔王が恋人だったのかを確かめたい。
魔王と会ったら――記憶が蘇るかもしれない。

コンコン。
ノックの音がして扉を開けると、ポムがにっこり微笑んで立っていた。

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