唖然としたまま家に戻どろうとしたあなたを引き込める声が一つだけあった。
それは、レイトの声であった。優しい声とは違う無機質な声……蹴落とされそうな存在感。いつもとちがうけどいつも通りな、そんな彼だった。
急に冷たくなったレイトの表情。しかし、あなたは怯まずに言い続ける。否、言わなければいけないのだ。
不意に、あなたから視線をそらして窓の外を眺め始めるレイト。あなたは、疑問を声にする。
憎悪と悲しみが入り交じった表情を浮かべるレイト。辛かったのだろうか? その白い頬には一筋の涙が伝っている。
銀色の髪……あなたの髪は、とても美しい銀髪である……つまりそれは……。
あなたの脳裏に一瞬だけあのころ……戦争に出ていた頃の辛い記憶が思い出される。
馬鹿らしくなった、実に単純で奥の深いその理由には、レイトのありたっけの感情が込められていた。静かな声なのに、いつもとなにかが違う。
ぐっと、拳を強く握るあなた。
──あなたを殺すことにしました。
それは、嫌いだから殺すのではない。敵国の人間だからではない。レイトだから、殺すのだ。愛しているからこそ、殺すのだ。
震えた声で気持ちを伝える、あなた。二人が抱えていた最大の秘密、それは恋心……。
お互いの素性も、感情も隠していたのに惹かれあった。それはまるで、磁石のように強い引力である。
レイトは、ただただ優しく微笑んで、あなたに言う。
振り下ろされる一筋の剣。広がる鮮血と、咲き乱れる紅の花。そこにあったのは……彼女の愛した人の亡骸だけであった。
亡骸には未来はない。奪い去ってきたものたちと同じように、この場所、この時間で止まってしまうのだ。
その日は……とても月の綺麗な夜であった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。