時間が過ぎて夜、いつも二人の笑い声が響いている家にはレイトの寝息が聞こえていた。すー、すー、と響く寝息。幸せな夢でも見ているのだろうか? とても、優しい微笑みを浮かべている。
しかし、静まり返ったはずの家に一つの音が響いた。
寝ていたはずのあなたである。本来であれば、寝ている時間のはずなのにどうして起きているのだろうか?
……理由は、お昼に散歩へ行ったときに感じた視線にあった。先程は憎悪、等と表現していたあなたであったが、その視線には何か“既視感”のようなものがあったのだ。
詳しいことはなにもわからない。しかし、それを知らなければならない……なぜか、あなたはそんなふうに思ってしまったのだ。
あなたは、何とかあまり音をたてずに家を抜け出せたようだ。
あなたは心のなかで一回レイトに謝った。そして、お昼に二人で進んでいった道を駆け出すのであった。
そんな声が聞こえたのは、あなたが走り初めて大体10分くらいたった頃だった。後ろから、前に感じたのと同じような視線……いいや、それから敵意が抜かれたような……ひたすらに何か懐かしいものであった。
驚いてあなたが振り返る。するとそこには……
そこにいたのは……あなたの兄であるルイ、がいたのである。
あなたに抱きついたルイ。驚いて転びそうになったあなた。しかし、何とか持ち直して冷静に答える。
とある人物、という不穏な響きに大きく跳び跳ねるあなたの心臓。
すっとんきょうな声があなたの口からこぼれ落ちた。どうして、祖国を裏切って逃げ出した私ではなく……レイトなのだろう。そんな疑問が思い浮かんだ。
知らなかった、そんなこと……あなたは、思わずにそんな言葉をこぼしてしまう。
──殺す
それは、今までのあなたが何度も行ってきた行為であった。人の命を奪い、その人の未来を亡くすこと。
出来るとは思えなかった。あまり長い時間を共に過ごしていないはず、殺そうと思えば殺せるはずなのに……。
ポツリと、言葉をこぼしたあなた
好き、つまりあなたがレイトのことを愛している。そういうことなのだろうか? けど、すとんとその言葉は心に落ちてきた。
あなたの顔が絶望にそまった。レイトが、殺される。その事実があなたの心を締め付けた。
そういって闇夜に溶けていくルイの姿。あなたは呆然とすることしかできなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。