手を繋がれて、一緒に山道を降りる。
その間、化け物に襲われることは無かった。
道中で何回か、天狗さんが睨みをきかせていたから、
本当に護ってくれているんだなと思った。
あれ…?
『なんで家知ってるんですか…』
「なんでって言われても…。
ずーーっと見てきたからね。
あなたちゃんのコト。」
顔をのぞき込まれ、目が合う。
少し茶色めの目に、左目には涙ボクロがある。
人間らしい顔つきだが、
どこからか私たちとは違うオーラがある。
『これからずっと、一緒に暮らすってことですか?』
「そうだね。
離れられるけど俺離れたくないし。」
…結構溺愛されてる…
『名前…』
「あー、俺の?
俺の名前は〜菅原孝支!
孝支くんでいいよ!」
『そうなんですか…菅原さん』
「ここは名前呼ぶとこでしょ!!
こーうーしーくーん!はい!!」
『こ、こうしくん…?』
「ん、いー子♡」
テンション高いな…この天狗…
私の家は和風の家。
洋室なんて無いし全部和室。
縁側もあって少し狭いが庭もある。
おばあちゃん達が住んでいたため、
1人にしては少し広すぎる。
……が、今日からはこの天狗…こうしくん、も、
一緒に住むらしい。
あんまり知らない人と同じ家いたくないな…
「あ、今ちょっと一緒にいんの嫌だな…
って思った!?」
『えっ、なんで分かったんですか』
「顔にガッツリ書いてあんべ!!
それに、俺はあなたちゃんのこと
ちゃーんと分かってるから大丈夫!」
『私はあなたのことほぼ知らないです』
「これからずっと一緒なんだし、
ゆっくりじっくり知っていけばいいよ♡」
瞳の奥が濁っている気がするが、気のせいにする。
「やっぱこの家広いな〜!」
(ほんとに帰らないんだ…)
「一人暮らし寂しいべ?
もう俺がいるからな!」
『まぁ……安心はできないですけど…』
「……あなたちゃんはもう一人で出歩くの禁止な」
『え?』
「あなたちゃんは狙われやすいからな
“素質”あるし“視える”し」
『み、“視える”?』
「だってさっき殺したやつだって、
普通の人には視えないし」
そう言われ顔が青くなり汗が吹き出す。
だって…だって今まで、そんな化け物、
『え…え、え?
だ、だって私、今までそんなの見たことも…』
「俺のおかげだな?」
『え?』
「俺が追い払ってるからだよ。
…あなたが視認する前に。」
『!』
「あと、あなたがここに来て
俺らの気に触れたからだな」
『気…?』
「まぁ妖力みたいなね。
今まで視る機会は沢山あったけど、
妖力がちょっとばかし足りなかったみたい
視たことなくてもさ、
ぼんや〜り見えたことはあるんじゃない?」
『…』
黙ってしまった。
確かに、化け物は見えたことは無い。けど…
ぼんやり、うすらぼんやりと見えたことは何回かある。
怖いとも思わない程度のぼやけ具合だったし、
特段なにをされるという訳でもなかったので、
気にしたこともなかった。
「無言は肯定。
ま、これからは怖がんなくても大丈夫だぞ!
なんたって俺がいるからな!!」
『私にとってはあなたも恐怖の対象なんですけど』
「なんで?守ってあげてんじゃん
怖がる要素ないべ?」
『…背中の翼とか』
「あぁ、これ?」
そう言いながら翼を背中に隠した。
え、隠せるの?
「はい、これで翼見えない。
怖がることないな?」
『…』
「はやく心開いてくれるといいんだけどな〜」
(開けるわけない…)












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!