第25話

すれ違い_#25
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2020/10/02 12:34 更新
樹side
藤原樹
ハァ…ハァ…翔平。
走り続けておよそ15分。
漸くのことで病院に辿り着くことが出来た俺だが、
広すぎる病院内に圧倒され、
肝心の翔平を探すすべを見失っていた。
どっちにいっても行き止まりばかりで、
あれ?と思えば、さっき歩いた道だし。
途方に暮れた俺だったが、
今は歩いてないと…探してないと気が済まない。
と、そんなとき小さな男の後ろ姿を見つけた。
雰囲気は完全に翔平。
しかし後ろ姿では判別がつかない。
俺は決死の思いで彼に声をかけた。
藤原樹
あの!
すると彼は立ち止まり、ゆっくりと俺の方を向いた。
結論から言うと、
翔平ではなかった。
しかしこの顔、見覚えがある。
小柄な彼の肌は異様に白く、
切れ長の鋭い目に思わず引き込まれそうになる。
山本彰吾
驚いた様子の彼は、俺の顔を見つめている。
藤原樹
あの…えっと…
キョドる俺をじっと見つめ続けている彼。
山本彰吾
藤原樹
こいつ!知りませんか?
俺は写真フォルダーに
唯一入っていた1枚の写真を彼に見せた。
たった1枚の翔平の写真。
照れくさくて写真撮らせてなんて言えない俺に、
あいつは躊躇いもなく俺との写真を撮った。
しかも俺の携帯で。
「おっ!盛れとるやん!」
なんてニヤニヤしながら俺に見せてくる翔平が蘇る。
そんな昔の、思い出の1枚。
藤原樹
知りませんよね…。すみません。
俺が携帯を回収しようとすると、
携帯を握る彼の手に込められる強い力。
そして出会って初めての言葉。
山本彰吾
しょうへい…
彼の言葉に俺は目を見開いた。
藤原樹
知ってるんですか!?
山本彰吾
…翔平。
しかし会話が噛み合わない。
病衣を身に纏っている様子から、
ここの病院の患者さんであることは確かだが…
あ、まって。
俺に思い当たる節が1つ。
週に何回か、翔平が病院に用があるからとか言って、
数本の花を手に持っていたのはこの人のためとか?
根拠の無い推理が俺の頭を占める。
藤原樹
知り合いですか?翔平と。
山本彰吾
藤原樹
あいつどこ行ったか知りませんか?
山本彰吾
…誰。
そう彼に聞かれ、
俺が名前も名乗らずに質問攻めしていたことに気がついた。
確かに非常識な行為だ。
藤原樹
俺は藤原樹って言います。
翔平の幼馴染です。
…あなたは?
すると先程までの態度とは一変した彼。
途端に焦り始めた。
山本彰吾
…翔平を助けて!
藤原樹
え?
山本彰吾
だからっ!ハァハァハァ!翔平を!…ハァハァハァハァハァハァ…
そして彼はその場に倒れるように蹲った。
医師「山本さん!山本さん大丈夫ですからね!
落ち着いて呼吸しましょうか!大丈夫ですよ!」
近くにいた医師に介護され、
山本と称された彼の呼吸も安定してきた。
医師「えっと…失礼ですがどちら様でしょうか。」
藤原樹
あ、俺は人を探してて。
医師「そうでしたか。では。」
そのまま医師に連れられ行ってしまった彼を、
俺はただ見送ることしか出来なかった。
翔平を助けて。
一体どういうことだろうか。
まこっちゃんが言ってたように、
翔平になにか危険が迫っているのだろうか。
行く宛てのなくなった俺は、
とぼとぼと来た道を歩いていた。
翔平の居場所を完全に見失ってしまった。
俺がため息をつけば、
それを簡単にかき消す、颯爽と走り去って行った救急車。
大きなサイレンを鳴らし、
姿を現したのは一瞬にもかかわらず、
莫大な存在感を残して去っていった。
翔平、ほんとどこ行ったんだよ。
携帯を鳴らしてみるも、でる様子もないし。
いや…
きてる。
翔平からメールきてる。
俺は驚きすぎて思わず携帯を落としそうになったが、
一旦正気を取り戻し、メール受信画面を開いた。
一番上に浦川翔平と文字。
『どうしよう。樹。』
たった2文。
たった6文字。
それでも感じる大きな不安と焦り。
『いまどこ?』
俺が打ち返すと、直ぐに返ってくる返事。
『病院。』
俺は翔平の返信を見た瞬間、来た道を全速力で走り戻った。
翔平を想う度に、走る速度は早まった。
next…

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