第32話

嫌われたくない[乙女解剖より]
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2019/07/15 03:04
「こんばんわ…今平気かな?」

淡白なメールをうって彼に送る



特に用事は無い

唯…彼に会いたかっただけなのだ

会って…一緒に居たかった………だけなのに…



私が見たのは彼と楽しく歩く女の人の姿



私は夢でも見ているのだろうか……



でも………どう考えても彼だった

お互い楽しく微笑みながら会話する2人

お互い仮面なんか被っちゃって………

“ 楽シソウダネ ”

私たちの方がもっと愛し合ってる………あの女より…ずっと……





元々私達の恋は‘偽り’から始まったものだった



私はポートマフィア…彼は探偵社…

私は首領からの命令で彼……太宰治を落とさなければならなかった…


でも…落とされたのは…………私の方だった…




太宰治
太宰治
知っているよ…君は私の事好きじゃない。仕事なんだろう?
あなた

でも…私は…………

太宰治
太宰治
好きになったんだろう?……本気で…私に…

言葉が詰まる……

太宰治
太宰治
クスクス…ほんとに可愛いな…君は……

重なる唇………初めての感覚

太宰治
太宰治
私を本気にさせたのだから責任とってね?



そう言って微笑む彼

全ての初めてを奪っていった彼




ここから始まった私たちの恋

お互いホントの名前で呼べる関係に…




“ 行きたくない ”

“ 行ってはならない ”


そうは分かってても…彼の誘惑に…彼という人に…負けてしまった私は……

その先に踏み込んでしまった





‘偽り’から‘本気’に変わった恋…………のはずなのに







どうらやら私は…見てはいけないものを見てしまったらしい

ううん……きっと嘘だよ……嘘に決まってる

これは悪い夢なんだ……

夢だよね?




“ ネェ…夢ダッテ言ッテヨ ”

“ 違ウヨッテ…否定シテヨ ”






あんなに

“ 愛してる ”

って言ってくれてたじゃない



私はメールをうつ

“ 今どこ? ”

“ 会いたい ”


貴方に見て欲しくて…会いに来て欲しくて…


私はスパイスををまいた

思い込みのという名の狂気を……


それなのに…効果はない




あなた

………冷たいね…



誰にも拾われること無く落ちる台詞




嫌だ……

“ 誤解されたくない ”

“ 失恋したくない ”



“ 嫌われたくない ”



そう思っても……もう遅かった…




日に日に繋がらなくなる携帯


紡いできた糸が切れる…


“ 会イタイ ”

“ 好キダヨ ”

“ 愛シテル ”




嘘ばっか………



‘偽り’から‘本気’なんて思ってたのは私だけだったらしい


結局‘偽り’は‘偽り’のままだった





全テハ “ アノ夜 ” ノセイダ

だから私は………


お風呂に水を貯めたりした

電車の駅のホームにも立ち入った



でも…やっぱり………





私が来るのは結局ここだった


彼とよく来る川……彼がよく居る川……



自然と笑みが溢れる


最後に彼に会うべき?

“ 生きたくない ”って言うべき?


そしたらもっと

“ 楽ニナレタノカナ ”




なんて………そんな訳ないじゃん






私は笑みを浮かべたまま身を投げる



“ サヨウナラ ”











身を投げてから死ぬまで私はある本を思い出した

いつしか手に取って読んだことのある‘解体新書’

私が彼に貰った感情全てを……解体できたらこんな事にはならなかった……?


ドキドキしたいじゃんか誰だって

ドキドキしてるじゃんか誰だって


身を投げて今になって分かった


“ 痛いくらいがいいんだ ”



って………


── END


*☼*―――――*☼*―――――
リクエストありがとうございました( *´꒳`*)
乙女解剖良いですね!笑
なんかすごい歌詞の意味を解釈してるホームページ見て書いたのですがとても深い曲でした!
リピートしながら書いてました笑


読者の皆様がドキドキしてくれたら幸いです( *´꒳`*)

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