第6話

花園で。
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2024/01/09 21:39 更新
花園。
我が家の庭の奥の奥にあって、裏道を通って行かないとたどり着けない場所。
リンドウ、ヒヤシンス、ラベンダーなど、あっちの世界でも馴染みある花に加え、ヒャッカソウ、クルナ、ミツナソウなど、こっちの世界にしかない花も植えられている。
一見とても綺麗で、丁寧に手入れをされている花園に見えるけど実際は違う。
この場所からは不思議なことに地面から魔力が漏れ出している。


そんな場所にある土も当然、魔力をたっぷり含んでいる。


なら、その土の上に植えられた花たちもたくさんの魔力を吸って成長する。
この花たちは今,魔法の力を持った特別な花たちなのだ。
もともと薬効を持っていて、煎じるだけで傷や風邪によく効く薬になるミツナソウは重い病気でも症状を軽減するくらいの効果になっているし。
炎の力を宿しているという伝説があるクルナは燃えるような花を咲かせているけど、それを圧縮すれば炎の魔石が出来そうなくらいの魔力を秘めているし。
速度上昇の魔法薬の材料になるヒャッカソウは凝縮した魔法薬にしないでそのまま食しても魔法薬以上の効果を発揮するくらいに強まっているし。
どれも、悪用されれば大変なことになるのには違いない。
意外なことに、この世界では魔力を持った土に植物を植える、という発想はないようで。
魔法の力を持った花は今のところ、出回っていないらしい。
つまるところ、この花園のことは絶対に外に漏らしてはいけない、最重要秘密と言っても過言ではない。
実際、うちでもこの花園の存在を知ってるのは母様と私、母様の専属メイドのナナさんだけだし。
メメントモリ・オスタン
…ほんと、綺麗だなぁ。
木陰に座って花々を眺めているとなんだか心が癒される。
ガサ、ガサガサッ
メメントモリ・オスタン
ん?なんだろ?
不意に花畑の一角……クルナを植えてある辺りの鼻が揺れた。
不思議に思って近づいてみると…
メメントモリ・オスタン
…………火の精霊サラマンダー……?
びくっと、そのトカゲのような生き物…サラマンダーは震えた。
こっちを振り向いたサラマンダーは手にクルナの花を抱えている。
メメントモリ・オスタン
それ…クルナ?
???
え、ええ、えっと、こんなに魔力が凝縮されたクルナ見るの始めてだったから、つい食べたくなっちゃいまして……勝手に食べようとしてごめんなさいっ!
メメントモリ・オスタン
あー、そういうこと。たしかに火の精霊だし、炎の魔力がこもったクルナも食べるのか。
慌てて弁明し始めたサラマンダーはその綺麗な赤色の瞳をきょろきょろと動かしている。


漆黒の尻尾もワタワタ動いててとてもかわいい。
メメントモリ・オスタン
いいですよ。そういうことなら。お好きな分、お取りください。
???
えっ、いいんですか?!
メメントモリ・オスタン
ええ。別に全部食べ尽くしちゃうわけじゃないんでしょう?
Latte
あ、ありがとうございます…!あ、申し遅れました。私のことはどうぞ、Latteとお呼びください。
メメントモリ・オスタン
Latte………さんですね…。私のことはメメとでもお呼びください。
Latteさん……。
その名前を聞くとめめ村のL atteさんを思い出した。
いや、まさか、ね…。
メメントモリ・オスタン
あ、でもこの花園でのことは秘密でお願いします。詳しくは教えられませんが、こちらにも色々と事情がありまして。
Latte
そういうことならわかりました。
Latteさんはいい人…じゃなくて、いいサラマンダーに見えるけど、口止めはちゃんとしておかないとね。
Latte
…あ、そろそろ行かないと。私、ご主人様とはぐれちゃったんです。たぶん、心配して探されてるかも…
メメントモリ・オスタン
あら、パーティーの来賓の方と一緒に来たのですか?
Latte
はい。てことで私はこれで…
メメントモリ・オスタン
あの、よろしければ一緒に探しましょうか?
Latte
えっ、いいんですか?
メメントモリ・オスタン
はい。だって、そんな小さな身体であの会場に戻ったらいつ踏み潰されてしまうかわかりませんし。
Latte
あ、ありがとうございます!!
メメントモリ・オスタン
それじゃあ、一回パーティー会場へ戻りましょうか。
…完結する気しないなぁ。

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