大我Side
北斗と付き合い始めて、一ヶ月が経った。
幸せいっぱ〜いなんだけど、ただ一つだけ不満なことがある。
一ヶ月経つのに、キス以上の進展がないということ。
大(一緒にいるのにキスだけって……)
オレは、ふぅ、と息を吐く。
大(それってオレに魅力がないってことかな?)
もう何度目か分からない、それを、また思って、深い深い溜め息を……。
北「溜め息ばかり吐いてないで、大我も参加しなさいよ」
北斗の声が聞こえてオレは、はっと我に返れば、髙地が呆れたような声を出す。
髙「そうだぞ。大我が春休みで皆で旅行に行こうって言い出したんだからな」
大『ごめんごめん。それで何だっけ?』
慌ててオレは机に広げられた旅行雑誌に視線を戻した。
雑誌には春休み&GW特集が組まれており、春休みを思い切り遊び尽くすイベントや遊び場、旅行先が紹介されていた。
友達と旅行の計画を立てているだけで楽しいものだけど、それが恋人も一緒だと尚更楽しいものだ。
大『オレ、いちご狩りに行きたい!』
北「大我は本当にいちごが好きだよな。ショートケーキに乗ってるいちごも最後に食べるし」
髙「そうそう。飲み物も毎回いちごオ・レだもんな」
大『好きなんだからいいだろ』
オレは、プイッと横を向く。
すると、北斗がフッと笑ってオレの頭を撫でてきた。
北「可愛い大我に似合ってんだからいいじゃない」
大『それって褒めてんの?それとも貶してんの?』
北「褒めてるんだけどな」
大『あまり嬉しくない……』
髙「そこのニ人、イチャつくのは後にして、さっさと計画を立てるぞ」
ジェ「なになにこーち、仲睦まじい二人に嫉妬?だったら、俺たちもイチャつく?」
ジェシーがニヤニヤしながら、髙地の肩に手を回した。
髙地はその手を振り払い、ジェシーを睨みつける。
髙「ジェシー、少しでも人前で俺に触れたら、二度と口を聞かないからな」
ジェ「え〜、それはないよ〜こーち」
ジェシーがガックリと肩を落とした。
髙「そうなりたくないなら、人前で俺に触れるな、いいな」
ジェ「こーちの横暴。好きな相手に触れたいって思うことは普通のことだろ。な?北斗、慎太郎」
ジェシーに同意を求められて、北斗はどう答えていいか分からず曖昧に笑い、慎太郎は「そうだよなぁ、触れたいよなぁ」と樹に視線を送りながら同意をしている。
髙「ジェシーのせいで話が進まないだろ」
ジェ「えぇ〜俺のせい?」
北「ジェシーは放っておいて、旅行の行き先はどうする?」
樹「そうだな……、あまり金もないし、遠出や泊まりは難しそうだな」
慎「じゃあ、近場でいいところはないかな」
ジェ「えぇ?!俺のことはムシ?」
一人騒ぐジェシーを他所に、オレたちは話を続ける。
大『だったら、オレん家の別荘に来ない?近くにいちご狩りできる所もあるし』
樹「別荘?!きょもん家、別荘があんの?もしかして、きょもん家ってお金持ち?」
大『普通だと思うけど……』
北「あのね大我、普通の一般家庭は別荘なんてないんだよ」
大『え?皆の家には別荘はないの?』
北「ないの。俺ん家にも別荘なんてなかったでしょうが」
大『確かに考えてみれば、北斗の家にはなかったかも』
北「なかったかもじゃなくて、ないのよ別荘なんて。ね?みんな」
北斗たちが顔を見合わせて、うんうんと頷き合っている。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。