第35話

魅惑仕掛け①
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2024/02/05 22:14





大我Side








北斗と付き合い始めて、一ヶ月が経った。



幸せいっぱ〜いなんだけど、ただ一つだけ不満なことがある。



一ヶ月経つのに、キス以上の進展がないということ。



大(一緒にいるのにキスだけって……)



オレは、ふぅ、と息を吐く。



大(それってオレに魅力がないってことかな?)



もう何度目か分からない、それを、また思って、深い深い溜め息を……。



北「溜め息ばかり吐いてないで、大我も参加しなさいよ」



北斗の声が聞こえてオレは、はっと我に返れば、髙地が呆れたような声を出す。



髙「そうだぞ。大我が春休みで皆で旅行に行こうって言い出したんだからな」


大『ごめんごめん。それで何だっけ?』



慌ててオレは机に広げられた旅行雑誌に視線を戻した。


雑誌には春休み&GW特集が組まれており、春休みを思い切り遊び尽くすイベントや遊び場、旅行先が紹介されていた。


友達と旅行の計画を立てているだけで楽しいものだけど、それが恋人も一緒だと尚更楽しいものだ。



大『オレ、いちご狩りに行きたい!』


北「大我は本当にいちごが好きだよな。ショートケーキに乗ってるいちごも最後に食べるし」


髙「そうそう。飲み物も毎回いちごオ・レだもんな」


大『好きなんだからいいだろ』



オレは、プイッと横を向く。


すると、北斗がフッと笑ってオレの頭を撫でてきた。



北「可愛い大我に似合ってんだからいいじゃない」


大『それって褒めてんの?それとも貶してんの?』


北「褒めてるんだけどな」


大『あまり嬉しくない……』


髙「そこのニ人、イチャつくのは後にして、さっさと計画を立てるぞ」


ジェ「なになにこーち、仲睦まじい二人に嫉妬?だったら、俺たちもイチャつく?」



ジェシーがニヤニヤしながら、髙地の肩に手を回した。


髙地はその手を振り払い、ジェシーを睨みつける。



髙「ジェシー、少しでも人前で俺に触れたら、二度と口を聞かないからな」


ジェ「え〜、それはないよ〜こーち」



ジェシーがガックリと肩を落とした。



髙「そうなりたくないなら、人前で俺に触れるな、いいな」


ジェ「こーちの横暴。好きな相手に触れたいって思うことは普通のことだろ。な?北斗、慎太郎」



ジェシーに同意を求められて、北斗はどう答えていいか分からず曖昧に笑い、慎太郎は「そうだよなぁ、触れたいよなぁ」と樹に視線を送りながら同意をしている。



髙「ジェシーのせいで話が進まないだろ」


ジェ「えぇ〜俺のせい?」


北「ジェシーは放っておいて、旅行の行き先はどうする?」


樹「そうだな……、あまり金もないし、遠出や泊まりは難しそうだな」


慎「じゃあ、近場でいいところはないかな」


ジェ「えぇ?!俺のことはムシ?」



一人騒ぐジェシーを他所に、オレたちは話を続ける。



大『だったら、オレん家の別荘に来ない?近くにいちご狩りできる所もあるし』


樹「別荘?!きょもん家、別荘があんの?もしかして、きょもん家ってお金持ち?」


大『普通だと思うけど……』


北「あのね大我、普通の一般家庭は別荘なんてないんだよ」


大『え?皆の家には別荘はないの?』


北「ないの。俺ん家にも別荘なんてなかったでしょうが」


大『確かに考えてみれば、北斗の家にはなかったかも』


北「なかったかもじゃなくて、ないのよ別荘なんて。ね?みんな」



北斗たちが顔を見合わせて、うんうんと頷き合っている。


  
  

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